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2015年09月29日18:01

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☆洋ちゃんの読観聴 No. 1081

☆洋ちゃんの読観聴 No. 1081                

青山文平 「鬼はもとより」                  

直木賞候補にあがった作品。この作家は経済誌の
編集にたずさわっていた元会社員。デビューは遅く、
既に60代後半だが、作品はまだ5〜6作くらい。
しかし、その作品はいずれも粒そろいだ。

主に江戸を舞台にした話が多いのだが、今回の
特徴は経済小説になっていること。ここが新鮮だ。

主人公・奥脇抄一郎は、某藩の藩札(その藩内のみで
通用する貨幣の代用品)係だった。しかし、宝暦の飢饉の
際に藩札の乱発によって事態を収束しようという上役と、
その娘婿に収まるはずの親友をふり切り、版木を持って
出奔した。藩内の経済はうまくいかず、藩は改易となった。

そして、抄一郎は、いまでは浪人となり、江戸で万年青
(おもと)を売って糊口をしのいでいる。が、その存在は
伝説的となり、さまざまな藩から藩札に関する知恵袋と
して相談を受けるようになる。いわば、江戸の経営
コンサルタントだ。

やがて、ある藩から求められ、藩の財政・産業政策全般を
まかされることになる。藩の家老の厚い信頼に支えられ、
抄一郎は大胆な施策をうっていく。

藩を企業にたとえるならば、企業経営の再建のための
商品開発、流通販路の確保など課題に挑んでいく。
また経営者の足をすくおうとする反体制派もいる。

よどみなく話は進むので、読みやすい。ただ、藩の窮乏
ぶりの描写は物足らないし、あまり苦労もなく(と読み取れる)
施策が成功していくのも僕としては不満だ。

とは言え、前述したように、時代小説と経済小説を見事に
融合した作品なので、広くビジネスマンにも読まれて
しかるべき作品である。

なにより、決断と責任、そしてリーダーの覚悟、これが
作者の訴えたいポイントだと思うし、今の日本社会で
抜け落ちている部分だと、僕は思う。だから本作品は
読まれるべき本なのだ。



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