今年は芥川也寸志生誕100年であり、芥川作品を演奏会で聴く機会も多くなりそうだ。今日の午後も、四ツ谷にオーケストラ・ニッポニカの演奏会を聴きに行った。
プログラムは次のとおりである。
・芥川也寸志:舞踊組曲「蜘蛛の糸」
・芥川也寸志:チェロとオーケストラのためのコンチェルト・オスティナート
・芥川也寸志:証城寺の腹づつみ〜オーケストラと狸のための〜
・芥川也寸志:交響曲第1番
指揮:野平 一郎/チェロ:佐藤晴真/ティンパニ:菅原淳
会場:日本製鉄紀尾井ホール (14:30 開演)
オール芥川プログラムである。「畏敬・諧謔・鎮魂」という副題が付けられており、演奏される作品に対応しているキーワードのようだ。紀尾井ホールも、今月から日本製鉄紀尾井ホールと名前が変わったが名前以外は特に変化はない。
まずは「蜘蛛の糸」からはじまる。芥川の父である龍之介の掌編小説をもとに舞踊音楽としたもので、筋書は原作のとおりである。今回は音楽だけを聴いたわけだが、十分にイメージが沸くものである。まあ、初めて聴く曲ではないのもあるが。芥川自身は父親としての龍之介に接することはほとんどなかったが、作品を通じて龍之介に畏敬の念を持って作曲したということであろう。
続いては「コンチェルト・オスティナート:である。チェロ協奏曲の形を取っている。「オスティナート」といえば、芥川作品の典型のようであるが、その典型のアレグロ・オスティナートとは雰囲気が違う作品である。チェンバロに導かれてゆったりと始まり、しっとりとした旋律を独奏チェロが歌い上げる。プログラムには「乾いた抒情性を持つ旋律」とあり、分かるような分からないような感じだが、芥川がどちらかというと避けていた抒情性に、敢えて向き合った作品ということらしい。いわゆる芥川節とはまた違った雰囲気を感じるのも、そういう背景があるのだろう。あまり聴く機会が多いとはいえない作品だと思うが、じっくりと堪能することができた。
このあとはチェロ独奏によるアンコール演奏があった。ここは芥川作品ではなく、カザルスの「鳥の歌」だった。
休憩のあとは「証城寺の腹づつみ」である。初めて聴く曲だが、タイトルからしてユーモラスな曲であることは予想できた。これは芥川が黒柳徹子とともに司会をした「音楽の広場」というNHKの番組内で演奏されたもので、「証城寺の狸囃子」を原曲に、ティンパニとオーケストラの協奏曲の形に編曲したものである。譜面も行方不明となっていたが、今回奇跡的に録音データが見つかり、そこから譜面起こしをして本日の再演になったそうだ。3分ほどの短い作品だが、ティンパニが奏でる「狸囃子」がなんともおかしく、諧謔に満ちた面白い曲である。
最後は交響曲第1番である。番号のついた交響曲は「第1番」しかないのだが、それはそれとして、芥川にとって大切な人たちが亡くなったりして、特にこの第3楽章は「兄・多加志への鎮魂曲である」と芥川自身が語ったことがあるそうだ。そんな曲を「芥川也寸志メモリアル」を冠するオーケストラが、いい加減な演奏をするわけがない。改めてこの曲が実に素晴らしい作品であることを認識さてくれる演奏であった。第1楽章のゆったりとした感じから紡ぎ出される豊かな響き。第2楽章のアレグロは芥川節全開のスケルツォで、最後は最強音で大きく盛り上がる。第3楽章の鎮魂曲で落ち着かせたあとは、第4楽章に突入だ。最後はこれでもかと盛り上げ、最高潮に達したところで曲を終える。
芥川也寸志が日本の音楽史に残した影響は大きいと思うが、作品だけをじっくり聴くことでも、それが分かるのである。素晴らしい演奏会であったと思う。
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