最近読んだ本の、備忘的メモ。
●「秋麗」 (今野敏著、ハルキ文庫)
久しぶりに、今野敏の「東京湾臨海署安積班」シリーズ。臨海署の近くで遺体が発見される。身元が分かると、その被害者はかつて特殊詐欺で逮捕された戸沢という七十代の男だった。死亡推定時刻の前日に釣り仲間と釣りを楽しんでいたことが分かり、その二人に話を聞きに行くと、なぜか怯えた様子で、その直後に行方が分からなくなってしまう。特殊詐欺と今回の殺人事件は関係があるのだろうか。捜査を進めていくうちに、ある人物が浮かび上がる。その久志木という男は戸沢の詐欺被害にあったと思われる。そして戸沢の釣り仲間は、かつての詐欺仲間でもあった。久志木は容疑濃厚ながら、なかなか決め手がない。しかし、ついに真相が暴かれるのである。お馴染みの今野敏の警察小説。なんだかんだと結構読んでいる。
●「昭和の鉄道 聞き語り」 (松本正司著、天夢人)
元国鉄・JR職員である著者が、自身の経験や先輩・同僚のエピソードを綴った本である。まずは、古参職員から聞いた昭和時代の国鉄の、様々なエピソードから始まる。今なら問題となりそうな話もたくさんあるが、それはそれで古き良き時代の話ということもできるだろう。そして学生時代のアルバイト駅員時代の話、国鉄に就職して大宮機関区に配属されてからの話に大部分のページを割いている。現場の視点での、ちょっと危ない話や裏話など、外部のマニア視点の話とは違い、なかなか面白い。そして一旦鉄道の現場を離れて鉄道模型やグッズを扱う直営店に行くことになるのだが、そこから再びJR職員として乗務員に返り咲くことになる。昭和の国鉄の現場の雰囲気がよく分かる面白い本である。
●「サキの忘れ物」 (津村記久子著、新潮文庫)
最近読み始めた津村記久子の小説が面白いと思っていて、これが3冊目になるが、タイトルを見た時はサキという女性が主人公の話かと思ったら違い、短編小説の名手といわれた英国の作家サキのことなのであった。物語に登場する「サキ短編集」(新潮文庫)を以前読んでおり、なんとなく気になった。特に夢中になれるものもなく、高校を中退して喫茶店でアルバイトをしている千春。そこでいつも本を読んでいる常連の女性客が気になる。たまたま忘れ物となった本を見ると「サキ短編集」であった。これまで本もまともに読んだことのない千春だったが、その日からなぜかサキの小説を読み始める。それがきっかけで千春の中で何かが動き、変わろうとする自分に気付くのであった。どうということもない話なのに心に染みる。他にも、ちょっとした出来事を捉えて、そこから不思議な話に展開するような、独特の味わいのある短編8編を収録している。
●「数学史の小窓」 (中村滋著、日本評論社)
「数学セミナー」の連載記事をまとめた本で、「数学セミナー」も大学生の時には毎月買っていたので懐かしい。この本はタイトルのとおり数学史の本だが、細かいことを追っていたら膨大になってしまうので、あくまでも流れを大づかみに捉えつつも、いくつかのポイントに「小窓」を開けて、天才たちのアイデアを覗いてみようというものである。それまでなんとなく通説として知られていたことも、新たな検証で新事実がわかり、それを正す試みもしている。古代バビロニアにおける数字の起源にはじまり、古代エジプト、古代ギリシャ、古代中国の数学をたどり、数字としてのゼロの発見で有名なインドの数学などに至る流れを追っていく。ルネサンス以降は、デカルト、フェルマー、ニュートン、ライプニッツ、オイラー、ガウス、リーマンと、それぞれの時代の巨人たちの業績を記し、現代数学への道程として、ヒルベルト、ポアンカレ、高木貞治で締める。数学は古代より脈々と続く、悠久の大河の流れなのである。未解決な問題も多く、この流れはこの先もずっと続いていくのであろう。
●「失敗のメカニズム」 (芳賀繁著、角川ソフィア文庫)
日常の小さなミスも、大きな事故につながるエラーも、本質的には同じ「失敗」である。この本は、本人の意図に反して自身や周囲に被害を与えてしまう人間の行動を「ヒューマンエラー」と位置付け、それがどのような要因で発生するのかの仕組みを解説しているものである。見間違い・聞き違いや勘違いから起こる失敗、注意力や記憶力と失敗との関係など、いろいろな事例をあげて説明する。エラーを誘発する設計と防止する設計はどう違うのか、違反や不安全行動がどのような事故を発生させるのかなど、普段会社でも何度も聞かされて(あるいは聞かせて)いる話そのものだ。結局人間は考えずに行動するものだし、失敗から逃れることはできない。それでも生命に関わるような事故は起こしてはならないのである。
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