最近読んだ本の、備忘的メモ。
●「貨物列車のあゆみ」 (小島英俊著、交通新聞社新書)
鉄道による貨物輸送が始まって150年になるが、「2024年問題」が出てきて、新たな転換期となりそうである。それを踏まえて、鉄道貨物の歴史とこれからについて述べた本である。旅客と違って貨物は自分の足で移動できない。戸口から戸口までをトータルで考えなければいけないのだが、それはトラックに主役を奪われた要因でもあった。国鉄時代はさまざまな貨車が登場し、広大な操車場で組み換えをしながら、それぞれの目的地へ輸送していたが、次第に始発から終点まで決まったルートを走る列車が増え、コンテナ輸送が主力になってくる。そうなると操車場は役割を終えることになる。また、旅客部門が管轄する荷物や郵便の輸送もあった。貨物列車の歴史を振り返りながら、輸送の効率化、災害時の輸送路確保、そして環境問題など現在の課題解決に向けた取組みなどを述べる。鉄道貨物も新たな動きがあるであろう。
●「新!店長がバカすぎて」 (早見和真著、ハルキ文庫)
「店長がバカすぎて」の第2弾である。宮崎に転勤になった山本猛元店長が、再び武蔵野書店吉祥寺本店に店長として帰ってきた。相変わらず人を苛立たせる天才ぶりを発揮し、谷原京子ら本店の店員たちは気が滅入るのであった。それでも京子は好きで就いた仕事だし、充実した日々を過ごすのであった。素晴らしい才能を持った新人作家の作品を強力に推したり、好きな作家の新作に心踊らされたりしながらも、クセのあるアルバイトに振り回されたり、店に来た社長の息子と喧嘩してしまったり、面倒くさい客に絡まれたり...。この書店をモデルにした、あまりにもリアルな小説も出て話題になる。そんな中、本店新装開店を機に、京子は次の店長になるよう推薦される。しかし、京子それを断り、結局山本猛が店長を続けることになる。そして新装開店のイベントで衝撃の事実が明らかになるのだった。
●「薬なければ病なし」 (塔山郁著、宝島社文庫)
「薬剤師・毒島花織の名推理」シリーズの第6作。薬剤師の視点で、薬に関する豊富な知識を元に事件を解決するストーリーである。全6編あるが、中編3編と超短編3編が掲載されている。超短編の方は「3分で読める!」シリーズに掲載されたものらしい。認知症の祖母が持つ株券を引き出す方法をさがす話、眠れない病気をかかえる元警察官の悩みを解決する話、祖母が薬を変えられたことを嫌がり元の薬がいいと言う理由を突き止める話、女子中学生が手に負っている傷の謎を解く話、処方箋をめぐる闇バイトの話を聞き、止めさせる話、そして肝油ドロップの盗み食いとオブラートの話と、それぞれの家族を取り巻く「お薬ミステリー」である。なんとなく、薬の知識も付くような小説である。
●「数学者の思案」 (河東泰之著、岩波科学ライブラリー)
数学者とはどのような人なのか、大学における数学者は実際どのようなことをしているのか、数学研究とはそもそも何なのか等を、自身の経験を踏まえて綴ったエッセイ集のような本である。一般に数学者は「頭が良い」とされることが多いが、数学の試験の点数が良ければ数学者になれるわけではない。本人の独創力と、多様性を求める社会がなければ、真に優れた数学者は生まれない。日米の大学の違いについても述べ、学内で「長」が付く役職についた場合に大きな違いがあるようだ。日本では雑用が増えるだけで何の権力もなく、なりたがる人は少ないが、米国では学科運営の強大な権限を持つらしい。また、著者は複数のジャーナルの編集にも関わっているが、送られた論文のうち掲載されるのは半分にも満たないそうで、レベルの低い論文に辟易しているようだ。2000年も前に分かっていることを「新発見の定理」としたり、幼稚な論理で「未解決問題をついに解決した」と豪語したり...。面白い話が満載の本である。
●「さいはての彼女」 (原田マハ著、角川文庫)
4編のストーリーからなる短編集である。それぞれに共通しているのは、もう若いという年齢でもない女性が主人公で、社会的にもそれなりの地位についているのだが、それが崩れそうになった時に、旅先での出会いによって何かが変わっていく、という話になっていることである。標題作の「さいはての彼女」はこんな話。若くして起業して成功している社長の涼香。絶大な信頼をおいていた秘書が会社を去ると言い出し、裏切られた思いがするが、吹っ切るために休暇を取って沖縄で優雅なバカンスを楽しむことにする。ところが、秘書から手渡されたのは依頼した沖縄行きの航空券ではなく、なぜか女満別行きであることに搭乗直前に気付く。仕方なく北海道に行くが、そこでバイク乗りの少女と出会い、さんざん振り回されるが、結局その出会いが涼香の心境を変えることになるのである。最初の方はコミカルな部分もあるのに、最後には涙腺をゆるませるようなストーリー展開は、さすがの原田マハである。
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