ストロング小林さん追悼(670)

80年新日本プロレス「ブラディ・ファイト・シリーズ」及び「ファン感謝スーパー・ファイト」を総括してみたいと思います。

序盤戦(８月22日品川プリンスホテルゴールドホール〜８月27日下田市外ヶ岡埋立地特設リング)特別参加のＷＷＦヘビー級王者、ボブ・バックランドは開幕戦の猪木とのタイトル戦をスタン・ハンセン＆ラリー・シャープの乱入によりぶち壊され(20分31秒、バックランドのリングアウト負け、ルールによりベルト移動せず)ました。

その結果、猪木に共闘を呼び掛け８月24日、初の猪木＆バックランド「帝王タッグ」が実現、ハンセン＆Ｌシャープ組を２−１で破りました。後日、猪木＆バックランド組は「ＭＳＧタッグ・リーグ戦」へのエントリーが決定、優勝候補の大本命に推されることになります。

ハンセンは今シリーズも凄まじい暴れっぷりを見せました。猪木のＮＷＦヘビー級王座に２度挑戦、ベルトは獲れませんでしたが体力で猪木を圧倒、今シリーズ、１月の「新春黄金シリーズ」に続いて猪木を欠場に追い込んでいます。

凶器を使わず､己の肉体だけで突進していくファイトスタイルはヒールながら新時代のヒーローとしてファンの支持を得ていきました。140kgの全体重を乗せた肘、膝による打撃は破壊力抜群、ウェスタン・ラリアートも巡業中にテレビで観ていたという、相撲のカチ上げをヒントにし、より踏み込んで打つようになりさらに威力が増しました。

９月25日、広島大会でのＮＷＦヘビー級選手権試合
は猪木の逆ラリアートという奇策が出ましたが、何かしら相手の裏をかく手を使わないとカウント３を奪うことは難しくなって来ていました。

新日本プロレス初参戦のＬシャープは今回はバックランドを除くナンバー２の扱い、９月22日、米子市民体育館で坂口征二のＷＷＦ北米ヘビー級王座に挑みましたが逆エビ固めであっさりギブアップ負けし本領発揮には至らず。

ノラリクラリした動きはスピード感に欠け、新日本プロレスよりは全日本プロレスの方が持ち味を発揮出来た感じです。

現役としての来日はこれが最後となり、これより６年４か月後の87年１月、新日本プロレスの「ニューイヤー・ダッシュ」にクラッシャー・バンバン・ビガロを輩出した「モンスター・ファクトリー」の代表兼マネージャーとして来日しています。この時は本当に活き活きとしており、喋りも上手くマネージャー向けだと思います。

息子が交通事故に遭い序盤の１週間で途中帰国したバッドニュース・アレン。予定されていたＬシャープとの北米タッグ王座挑戦は叶わず。息子がその後どうなったかは伝えられていませんが、野毛道場仕込みの実力は一級品であり、早い時期での再来日が期待されます。

４度目の来日となったトニー・ロコは９月11日、大阪で初めて日本で藤波辰巳のＷＷＦジュニア・ヘビー級王座に挑戦、20分を超える大激闘で藤波を苦しめました。帰国後はロサンゼルス地区を経てメキシコに渡り、マスクマンのドン・コルレオーネ(映画「ゴッドファーザー」の主役の役名から取ったもの)に変身。

日本から猪木＆藤波が遠征してきてアブドーラ・ザ・ブッチャー＆ペーロ・アグアヨ組と対戦した82年２月14日(現地時間)メキシコシティ・エル・トレオ・デ・クアトロカミノスではカネックのＵＷＡ世界ヘビー級王座に挑戦､２−１で敗れました。(テレビ朝日「ワールドプロレスリング」では放送されず)

その後はプロレス界の表舞台から姿を消しています。

ピート・ロバーツの実力者ぶりは健在、８月24日、田コロ大会で木村健吾のＮＷＡインターナショナル・ジュニア・ヘビー級王座に挑戦、敗れはしたもののグラウンドでは木村健を完封して見せました。８月29日、鳴戸大会でのテレビ生中継、藤波とのノンタイトルのシングルマッチはタイトルマッチにしてもおかしくない内容で､最後藤波にジャーマンを出させたのは藤波の最大限の敬意の現れでしょう。

また盟友ハンセンのタッグパートナーとして度々メインイベントに登場し息の合った試合ぶりを見せてくれいました。Ｌシャープ､アレンよりもハンセンとのタッグは向いていました。

新日本プロレスには５年半ぶりの参戦となった大ベテランのジョニー・ロンドスは扱いは最下位。前79年５月に国際プロレスにミレ・ツルノのお目付け役で来た時は負けなしでしたが…。

流石にトシを取ったな、という印象は拭えませんがテクニックは健在、勝ち星には恵まれませんでしたが内容は悪くなかったです。82年10月の「闘魂シリーズ」に来日してタイガーマスクと対戦しました。

カール・ゴッチと親交が深かったことから85年１月に旧ＵＷＦの「サンライズ・ウィークス」に最後の来日を果たしています。(この項続く)