80年新日本プロレス年間最終シリーズ「ＭＳＧタッグ・リーグ戦」は11月21日、横浜文化体育館で開幕。
参加チームは猪木＆ボブ・バックランド組、スタン・ハンセン＆ハルク・ホーガン組、アンドレ・ザ・ジャイアント＆ザ・ハングマン組、タイガー・ジェット・シン＆上田馬之助組、坂口征二＆ストロング小林組、藤波辰巳＆木村健吾組、バッドニュース・アレン＆ウィリエム・ルスカ組、長州力＆星野勘太郎組、ジョニー・パワーズ＆オックス・ベーカー組の全９チームがエントリー。
他、公式戦外参加外国人にレネ・グレイ、シリーズ終盤にダスティ・ローデスが特別参加しています。「タッグ屋」のいない新日本プロレスでは76年７〜８月の「アジア・リーグ戦」のタッグ部門以来ですが、タッグリーグ戦を看板にしたのは旗揚げ８年８か月の歴史でこれが初でした。
４〜６月にかけて行われた「第３回ＭＳＧシリーズ」に勝るとも劣らない豪華メンバーを集め、タッグリーグ戦の老舗である全日本プロレスの「世界最強タッグ決定リーグ戦」に同趣旨の企画で真っ向から勝負を挑むことになりました。
先の全日本プロレス「ジャイアント・シリーズ」に来日したテリー・ファンクは「ニュージャパンのタッグリーグ戦はイミテーション」と酷評しましたが、集客面で大きく新日本プロレスに水を開けられていた全日本プロレスのブッカーとしては危機に感じたことでしょう。
優勝候補の大本命と言われたＮＷＦヘビー級王者猪木とＷＷＦヘビー級王者バックランドの「帝王タッグ」。ＷＷＦのスケジュールの都合でバックランドは12月１日､愛知県体育館からの参加。この二人が組んだらまさに最強と言えます。両チームリングアウトや場外フェンスに巻き込まれての反則裁定で足を引っ張られない限りは死角なしと言えます。
バックランドは９月30日、日本武道館での「ファン感謝スーパーファイト」以来２か月ぶりの来日。前回はハンセンとＷＷＦヘビー級王座防衛戦を行い、ハンセンにフェンス越しに投げられて反則勝ちで手痛い防衛。
「帝王タッグ」誕生のきっかけとなったのは前々回の８月「ブラディ・ファイト・シリーズ」序盤戦に特別参加した時。８月22日、品川プリンスホテル・ゴールドホールで猪木とＷＷＦヘビー級選手権試合を闘い、ハンセン、ラリー・シャープの乱入による無差別攻撃を受け20分31秒、不本意なリングアウト負けによるタイトル防衛。
先にリングに上がってリングアウト勝ちをした猪木にタッグ結成を呼び掛け、猪木もこれを応諾。８月24日、田園コロシアムで猪木＆バックランド組が初結成されて、ハンセン＆Ｌシャープ組を２−１で破りました。これで意気投合した猪木とバックランドはタッグチームを本格的に結成することになりました。
大本命とは言え、ハンセンのパートナーはＬシャープより強力なホーガン、大巨人アンドレも「第３回ＭＳＧシリーズ」でハンセンの謀略により優勝決定戦に進出出来なかった悔しさをぶつけてくるでしょう。猪木の弱点を知り尽くしているシン＆上田組は猪木が暴走しての反則負けを誘導してくるでしょう。他のチームからは徹底してマークされる存在となりそうです。
対抗はハンセン＆ホーガン組、ハンセンは８〜９月の「ブラディ・ファイト・シリーズ」､９月30日､日本武道館での「ファン感謝スーパーファイト」以来２か月ぶりの来日、前回は猪木のＮＷＦヘビー級王座に２度挑戦。初戦の９月11日、大阪府立体育会館では場外乱闘ギリギリのところで猪木に寸前にリングに上がられ、僅差のリングアウト負け。
９月25日、広島県立体育館での再戦では猪木の奇策､逆ラリアートの前に、一瞬の逆さ押さえ込みでフォール負けを逸しましたが､このようなトリッキーな作戦を用いない限り､猪木がハンセンに勝つことは難しくなってきました。
９月30日､日本武道館での「ファン感謝スーパーファイト」ではテキサス州アマリロでの修行時代の同期だったバックランドのＷＷＦヘビー級王座に挑戦、レスリングでも互角に渡り合い、前方回転エビ固めを出すなど単なるブルファイターでないこと証明して見せ、最後はフェンスアウトによる不本意な反則負け。
ホーガンは10〜11月の「闘魂シリーズ」に次いで２シリーズ連続参戦。シンに次ぐ単独準エースとして活躍、11月３日、蔵前国技館では猪木のＮＷＦヘビー級王座に挑戦しブレーンバスターの前に敗れています。
俊敏さではハンセンに劣るものの、アンドレを「溜めのある」ボディスラムで投げ捨てる腕力はハンセン以上と言ってよく、ハンセンの巧みなリードで優勝を狙っていきます。
ホーガンがパワーで圧倒しベアハッグ、相手のスタミナを奪ってカリフォルニア・クラッシュ、グロッキーにしたところでハンセンがトドメにウェスタン・ラリアートという連係が確立されれば優勝の可能性も十分にあり、猪木＆バックランド組も一番警戒しなければならないタッグチームだと言えるでしょう。
ダークホースと目されるのがアンドレ＆ハングマン組。当初アンドレはＷＷＦで活躍していた「まだ見ぬ強豪」のイワン・プトスキーとのタッグで参加が発表されましたが、プトスキーが来日中止となり、代わりにフランス系カナダ人のハングマンがパートナーとなりました。
アンドレは５〜６月の「第３回ＭＳＧシリーズ」以来５か月ぶりの来日。前回は決勝リーグ戦で長州力に両者リングアウトに持ち込まれるなど取りこぼしがあり、結局はハンセン、坂口と並んでリーグ戦同点２位。
６月５日、蔵前国技館で３選手による決勝進出者決定トーナメントが行われ､１回戦で坂口をカウンターの18文キックからヒッププレスで圧殺したものの、１回戦シードとなったハンセンと対戦、乱入したホーガンに気を取られて不覚のリングアウト負けを喫し２年連続ファイナリストをハンセンに奪われています。
復讐に燃える大巨人の怒りが爆発するか！？いざとなれば１人でもリーグ戦を闘えるの規格外の怪物であり、パートナーの強弱はあまり関係ない一面もあるだけに侮れません。
ハングマンはスーパー・デストロイヤー、タワーリング・インフェルノとしても新日本プロレスのワールド・リーグ戦で活躍したネイル・グアイ。77年にロサンゼルスで黒覆面のザ・ハングマンに変身、同年８月の「闘魂シリーズ」に３度目の来日を果たして以来３年２か月ぶり４度目の来日。
前回の来日ではハンセンとタッグ組み、77年９月29日、大阪府立体育会館で坂口＆Ｓ小林組の北米タッグ王座に挑戦､２本目にＳ小林の怪力逆エビ固めの前にギブアップ負け、Ｓ小林が技を解かず絞め続けた為、腰を痛めて３本目､無念の試合放棄となっているだけにＳ小林へのリベンジは当然狙っていると思われます。
帰国後はマスクを脱いでジーン・レノとしてテネシー地区､カナダ・バンクーバーで活躍、79年にはスーパー・デストロイヤー・マーク�靴箸靴藤腺廝粗�り、マーク�兇離椒咫�(サージェント)・スローターとのタッグでトップヒールに出世。
80年に素顔のハングマンとしてＷＷＦに転戦し、フレッド・ブラッシーをマネージャーにしてバックランドのＷＷＦヘビー級王座､ペドロ・モラレスのインターコンチネンタル王座へのトップコンテンダーとなっています。３年前よりさらにハクをつけての来日でアンドレの足を引っ張るようなことはなく猪木、ハンセンも３年前のハングマンだと思ってかかると痛い目に合うことは必須。
ＷＷＦではベビーフェイスのアンドレとは初タッグとなりますが「フランス語を話せる」パートナーであり優勝戦線を掻き回しそうです。(この項続く)
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