横道誠「創作者の体感世界」2024年2月光文社新書
副題は、”南方熊楠から米津玄師まで”。
読む本を選ぶ場合、普通は著者やタイトルで選びますが、皆さんはどうですか?
たまに本の表紙、所謂ジャケ買いをする場合もありますが、希少です。
本書は、これまであまりなかった選び方をしました。
実は、副題をみて、ぱっと読もうと思ったのです。
明治日本の大博物学者も、令和のヒットメーカーも、私はファンなので。
そして、「から」と、「まで」なら、間にもっといるはずと思って、中を開いたら、
のけぞってしまいました。
だって、好きなクリエーターが文字通り、目白押しだったからです。
なんなんだ、これは!?です。
誰を論じているか。先に、目次をすべて紹介しましょう。
序 章 水中世界感 ―― そもそも発達障害とは何か
第1章 博覧強記感 ―― 南方熊楠
第2章 そこまで言うか感 ―― 与謝野晶子
第3章 ひとつの青い照明感 ―― 宮沢賢治
第4章 トウフ屋感 ―― 小津安二郎
第5章 芸術爆発感 ―― 岡本太郎
第6章 他者インストール感 ―― 石牟礼道子
第7章 金切り声感 ―― オノ・ヨーコ
第8章 コッテリ感 ―― 大江健三郎
第9章 水晶感 ―― 萩尾望都
第10章 わちゃわちゃ感 ―― 高橋留美子
第11章 人類補完計画感 ―― 庵野秀明
第12章 日常剝離感 ―― 蜷川実花
第13章 空想上のリア充感 ―― 新海誠
第14章 ツッコミ待ち感 ―― 村田沙耶香
第15章 UFO感 ―― 最果タヒ
第16章 春色の白昼夢感 ―― 米津玄師
この多彩なクリエーターたち選考方針と、このタイトルは何なんだ!と一瞬思いますが
著者なりの戦略がありました。
そして、大変遅ればせながら、惹句を紹介します。
”文学や芸術作品には、一般的な身体感覚から遊離した表現が多く見られる。それらを
読み解く鍵は、発達障害に通じる特性が握っていた?「天才」とされる創作者の仕事に
触発されて、発達障害と診断された著者の経験するさまざまな「感」が立ち現れていく。”
”かつてなく「当事者」が増えたこの時代に、「わからない」「理解できない」と否定さ
れるものを捉え直す。南方熊楠/与謝野晶子/宮沢賢治/小津安二郎/岡本太郎/石牟礼
道子/オノ・ヨーコ/大江健三郎/萩尾望都/高橋留美子/庵野秀明/蜷川実花/
新海誠/村田沙耶香/最果タヒ/米津玄師ら16人の天才の力を借りて「障害」の
意味を肯定的に読み替える「当事者批評」実践の書。”
著者は、1979年生まれの大学の文学の先生。ご自身が、自閉スペクトラム症に悩み、
その観点から,ご自身が好きだったクリエーターの仕事を分析したら,大いなる共感
を感じ、彼らも発達障害ではないかと論じたのが本書でした。
確かに、偉大なるクリエーターには,発達障害の人が多いとは聞いたことがありました
が、この先生にかかれば、芋づる式に出てきます。
本当に発達障害か否かは、証拠立てておらず,状況証拠と主観によって裁かれていくわけ
ですが、これだけのクリエーターが、何もクリエイトしなかったなら、日本は芸術的に
随分貧しい国だったなと思わせました。
まぁ,興味深く刺激的な書ではありました。
そういえば、昔読んだ本で、脳科学者の池谷裕二さんと作家の中村うさぎさんの対談で、
二人がともに自閉症スペクトラム症だったというのがあったので,最後に
紹介しますね。↓
https://mixi.jp/view_diary.pl?id=1971601387&owner_id=5540901
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