北村薫「中野のお父さんと五つの謎」2024年2月文藝春秋刊
継続して本を読んでいると、胃もたれがするときがあります。
そんな時、胃薬のように読む本があったりすると、いいですね。
私の場合、北村薫さんの小説は、そのひとつです。
重くなくて、滋味深く、毎回、すっきりとします。
本書は、シリーズ化されて、第4弾とのこと。
30代の出版社勤務の編集者の娘さんの、文学上の疑問を、60代の中野に住む元高校教師
のお父さんが、快刀乱麻を断つごとく解決します、
テーマが文学上の話題であり、その解決の仕方がカタルシスで、すっきりするのです。
それでは、本書の惹句を紹介します。
”〈本の達人〉が贈る名探偵シリーズ第4弾!”
”文藝編集者として出版社に勤める娘が仕事の現場で行き当たった〈謎〉を、
高校の国語教師のお父さんが解決して見せる〈中野のお父さん〉シリーズ第4弾!”
”かの夏目漱石は、英語の〈アイ・ラブ・ユー〉を〈月が綺麗ですね〉と訳した――
世間に広く伝わるこの話、じつは根拠のない伝説だった! ではこの伝説はいつ、
どのように生まれたのか? お父さんの推理が冴える!”
”ほかに芥川龍之介、松本清張、池波正太郎など、〈あの文豪〉の〈こんな謎〉を、
お父さんが見事に解決!”
本書に連作短編のタイトルは以下でした。()は私が付記。
漱石と月 (夏目漱石)
清張と手おくれ (松本清張)
「白浪看板」と語り(池波正太郎)
煙草入れと万葉集(久保田万太郎)
芥川と最初の本 (芥川龍之介)
英語の教師でもあった夏目漱石が、I love you.を、月が綺麗ですねと訳したエピソード
はどこかで読んだことがありましたが、都市伝説だったとは、初めて知りました。
でも、その都市伝説が生まれる背景を、本書では丁寧に解き明かしてくれます。
へぇ〜、ほぉ〜と言いながら、いつのまにか、胃がすっきり。
〈本の達人〉とも呼ばれる、作者・北村薫さんの面目躍如です!
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