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2024年02月10日12:00
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大阪行�◆崕�性画家たちの大阪」その1
(続き)
大阪中之島美術館で開催中の企画展は「女性画家たちの大阪」。
・会期 2023年12/23〜2024年2/25
・観覧料 1,800円也
本展は明治から大正,昭和にかけて活動した大阪ゆかりの女性日本画家達59名による、総展示186点に及ぶ展覧会。
その中心に島成園を位置付けている。
私は島成園(1892-1970)作品が好きで、これ迄何度も観ているが、総合的な展覧会に数点並ぶ程度のケースが多い。今回は前後期計で40点強も観る事ができるとの事で、愉しみにしていた。
以下、島成園を含む過去のレポート。
1)「豊田市美術館「近代の東アジアイメージ」展」(2009.12/20記)
https:/
2)「小川知子編・著『島成園と浪華の女性画家』」(2010年1/6記)…同タイトルの展覧会があったが、私は観ていない。レポートは書籍の内容について書いたもの。
小川知子は中之島美術館学芸員で現在 研究副主幹、今回の展覧会の企画･構成責任者である。
https:/
3)「岡崎市美術博物館「近代日本画にみる女性の美〜鏑木清方と東西の美人画」展」(2010年5/15記)
https:/
4)「「美人画の四季」展/駿府博物館」(2012年4/2記)
https:/
5)「コレクション展「FACE」/駿府博物館」(2015年1/18記)
https:/
6)「東京へ〜東京ステーションギャラリー「大阪の日本画」」(2023年6/2,3記)…島成園についての記述は�△里漾�
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今回の展覧会は、2006年大阪なんば高島屋を会場として行われた2)の展覧会をスタートとし、2023年中之島美術館及び東京ステーションギャラリーで行われた6)を踏まえてようやく辿り着いたものだ。
2)のデータは持っていないが、6)の出品作家は66名で内女性は13名だった。対して本展出品は女性画家のみで59名。
この間に、島成園の研究だけでなく、大阪ゆらいの女性画家とその作品の発見・調査は大きく進展した。
近代大阪の女性画家事情や島成園、その人物像と主要作品についてベーシックな部分は上のリンクから、殊に2)をご覧頂けたらありがたい。
本展の構成は以下の通り。
第1章「先駆者、島成園」
第2章「女四人の会〜島成園,岡本更園,木谷千草,松本華羊」
第3賞「伝統的な絵画〜南画,花鳥画など」
第4章「生田花朝と郷土芸術」
第5章「新たな時代を拓く女性たち」
◆第1章
本章では島成園作品を41点展示する。
成園が1912(大正元)年20歳の時、第6回文部省美術会(文展)で入選。東京,京都に比べると大阪の画家の文展入選者は極く少なく、しかも若い女性という事で、女性の社会的な活動が制限されていた時代に話題になった。
その成功に触発されて同世代の女性達が目覚め、個性と才能を発揮しようと起ち上がったありさまを第２章以降で見る事になる。そうした観点で、成園の先駆的意味は大きい。
最初の文展入選作《宗右衛門町の夕》は現在所在不明。
翌1913(大正2)年、《祭りのよそおい》が連続入選を果たす。…画像と解説は6)の�∋仮函�
しかし、1917(大正6)年の《おんな(原題 黒髪の誇り)》は再興院展で落選。…画像と解説は2)参照。
島成園は従来の典型的「美人画」のように人間を外面で描くのでなく、その内面を表現しようとした。日本画としては極めて斬新な試みである。
文展は多くの画家達が入選を目指す公募展として機能していたが、再興院展も公募展ではあったものの、横山大観と下村観山、2人の意向が強く働いた草創期には女性画家の入選実績は殆どない。
1918(大正7)年の《無題》は当時として極めてチャレンジングな作品。これ迄、私は現物を観た事がなく、かねてより観たいと思ってきた。…画像は1)、解説は2)参照。
自画像である事は明らかだが、絵の顔には黒い痣が描き込まれている。
当時の社会における女性の扱い、それに対する怨嗟のようなものがこの絵に表れていると言えるだろう。心が圧し潰されるような思いを持たない訳にいかない。
1920(大正9)年の《伽羅の薫》は文展のあとを継ぐ帝展(第２回)で入選するが、この強烈なデフォルメに対し賛否は分かれた。成園自身は、年増太夫の「傷ましい濃艶さ」を表現したと言っている。…画像･解説共に2)を参照。
同年末、28歳の成園は、家族が勧めた縁談を受け入れる。相手は森本豊治郎、横浜生金銀行(現三菱UFJ銀行)勤務。
夫は1924年上海支店に転勤、成園は上海と大阪を往復する事となる。その後、小樽、大連、芝罘(しふう)、横浜、松本、岡谷と点々とし、終戦後の1946年、夫の退職と伴に大阪に戻った。
美術史家 北川久の論文を引用すれば「成園にとって豊治郎との穏やかで安定した生活は、芸術上の危機となってスランプをもたらせ、デカダンな《伽羅の薫》で到達した境地は、進展することなく頓挫し、制作のペースも落ちて行った」。
小川知子の文章では「制作環境に大きな変化はなかったが、結婚後の成園は思うように制作できずに苦しみ続けた。《囃子》が最後の官展入選作となり、あっさりした作風へと変わる」。
冒頭のチラシ画像は1923(大正23)年頃/31歳頃と推定されている《桜下美人》の部分。
笹紅をつけたもうすぐ芸妓になる舞妓。媚びを売るような眼差しをこちらに向け、前に結んだ帯には「花」の字の柄が見える。頭上に咲く桜は既に散り始め、足許に溜まっていて、共に若さが儚い事を象徴するヴァニタスの普遍的表現。
《おんな(黒髪の誇り)》や《無題》,《伽羅の薫》迄に見せた、強烈な内面描写はない。
次の《囃子》は、上の小川知子の文中にあるもので、1927(昭和2)年制作、第8回帝展入選作品。
私は初めて観る作品。35歳、結婚後の作品の内の1枚。
踊りの会で初めてお囃子の太鼓を披露する若い女性の心持ちがその表情に表れている。
細部の究極迄拘り抜いた色彩に凄みさえ感じる。
(続く)
大阪中之島美術館で開催中の企画展は「女性画家たちの大阪」。
・会期 2023年12/23〜2024年2/25
・観覧料 1,800円也
本展は明治から大正,昭和にかけて活動した大阪ゆかりの女性日本画家達59名による、総展示186点に及ぶ展覧会。
その中心に島成園を位置付けている。
私は島成園(1892-1970)作品が好きで、これ迄何度も観ているが、総合的な展覧会に数点並ぶ程度のケースが多い。今回は前後期計で40点強も観る事ができるとの事で、愉しみにしていた。
以下、島成園を含む過去のレポート。
1)「豊田市美術館「近代の東アジアイメージ」展」(2009.12/20記)
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2)「小川知子編・著『島成園と浪華の女性画家』」(2010年1/6記)…同タイトルの展覧会があったが、私は観ていない。レポートは書籍の内容について書いたもの。
小川知子は中之島美術館学芸員で現在 研究副主幹、今回の展覧会の企画･構成責任者である。
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3)「岡崎市美術博物館「近代日本画にみる女性の美〜鏑木清方と東西の美人画」展」(2010年5/15記)
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4)「「美人画の四季」展/駿府博物館」(2012年4/2記)
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5)「コレクション展「FACE」/駿府博物館」(2015年1/18記)
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6)「東京へ〜東京ステーションギャラリー「大阪の日本画」」(2023年6/2,3記)…島成園についての記述は�△里漾�
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今回の展覧会は、2006年大阪なんば高島屋を会場として行われた2)の展覧会をスタートとし、2023年中之島美術館及び東京ステーションギャラリーで行われた6)を踏まえてようやく辿り着いたものだ。
2)のデータは持っていないが、6)の出品作家は66名で内女性は13名だった。対して本展出品は女性画家のみで59名。
この間に、島成園の研究だけでなく、大阪ゆらいの女性画家とその作品の発見・調査は大きく進展した。
近代大阪の女性画家事情や島成園、その人物像と主要作品についてベーシックな部分は上のリンクから、殊に2)をご覧頂けたらありがたい。
本展の構成は以下の通り。
第1章「先駆者、島成園」
第2章「女四人の会〜島成園,岡本更園,木谷千草,松本華羊」
第3賞「伝統的な絵画〜南画,花鳥画など」
第4章「生田花朝と郷土芸術」
第5章「新たな時代を拓く女性たち」
◆第1章
本章では島成園作品を41点展示する。
成園が1912(大正元)年20歳の時、第6回文部省美術会(文展)で入選。東京,京都に比べると大阪の画家の文展入選者は極く少なく、しかも若い女性という事で、女性の社会的な活動が制限されていた時代に話題になった。
その成功に触発されて同世代の女性達が目覚め、個性と才能を発揮しようと起ち上がったありさまを第２章以降で見る事になる。そうした観点で、成園の先駆的意味は大きい。
最初の文展入選作《宗右衛門町の夕》は現在所在不明。
翌1913(大正2)年、《祭りのよそおい》が連続入選を果たす。…画像と解説は6)の�∋仮函�
しかし、1917(大正6)年の《おんな(原題 黒髪の誇り)》は再興院展で落選。…画像と解説は2)参照。
島成園は従来の典型的「美人画」のように人間を外面で描くのでなく、その内面を表現しようとした。日本画としては極めて斬新な試みである。
文展は多くの画家達が入選を目指す公募展として機能していたが、再興院展も公募展ではあったものの、横山大観と下村観山、2人の意向が強く働いた草創期には女性画家の入選実績は殆どない。
1918(大正7)年の《無題》は当時として極めてチャレンジングな作品。これ迄、私は現物を観た事がなく、かねてより観たいと思ってきた。…画像は1)、解説は2)参照。
自画像である事は明らかだが、絵の顔には黒い痣が描き込まれている。
当時の社会における女性の扱い、それに対する怨嗟のようなものがこの絵に表れていると言えるだろう。心が圧し潰されるような思いを持たない訳にいかない。
1920(大正9)年の《伽羅の薫》は文展のあとを継ぐ帝展(第２回)で入選するが、この強烈なデフォルメに対し賛否は分かれた。成園自身は、年増太夫の「傷ましい濃艶さ」を表現したと言っている。…画像･解説共に2)を参照。
同年末、28歳の成園は、家族が勧めた縁談を受け入れる。相手は森本豊治郎、横浜生金銀行(現三菱UFJ銀行)勤務。
夫は1924年上海支店に転勤、成園は上海と大阪を往復する事となる。その後、小樽、大連、芝罘(しふう)、横浜、松本、岡谷と点々とし、終戦後の1946年、夫の退職と伴に大阪に戻った。
美術史家 北川久の論文を引用すれば「成園にとって豊治郎との穏やかで安定した生活は、芸術上の危機となってスランプをもたらせ、デカダンな《伽羅の薫》で到達した境地は、進展することなく頓挫し、制作のペースも落ちて行った」。
小川知子の文章では「制作環境に大きな変化はなかったが、結婚後の成園は思うように制作できずに苦しみ続けた。《囃子》が最後の官展入選作となり、あっさりした作風へと変わる」。
冒頭のチラシ画像は1923(大正23)年頃/31歳頃と推定されている《桜下美人》の部分。
笹紅をつけたもうすぐ芸妓になる舞妓。媚びを売るような眼差しをこちらに向け、前に結んだ帯には「花」の字の柄が見える。頭上に咲く桜は既に散り始め、足許に溜まっていて、共に若さが儚い事を象徴するヴァニタスの普遍的表現。
《おんな(黒髪の誇り)》や《無題》,《伽羅の薫》迄に見せた、強烈な内面描写はない。
次の《囃子》は、上の小川知子の文中にあるもので、1927(昭和2)年制作、第8回帝展入選作品。
私は初めて観る作品。35歳、結婚後の作品の内の1枚。
踊りの会で初めてお囃子の太鼓を披露する若い女性の心持ちがその表情に表れている。
細部の究極迄拘り抜いた色彩に凄みさえ感じる。
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