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2023年06月02日20:14

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東京へ～東京ステーションギャラリー「大阪の日本画」①

5/30～31(火～水)と1泊で東京に出かけた。
当然5月の棚卸しに入れるべきだが、間に合わず、こうして6月の日記に書き込んでいる。
今回は東京ステーションギャラリーの企画展を観るのが主目的で、併せて、国立西洋美術館その他も巡った。
これからぼちぼちレポートしようと思う。

東京ステーションギャラリーで開催されているのは「大阪の日本画」展。正確には「近代大阪の日本画」と言うべきだ。
・会期 4/15～6/11

大阪中之島美術館との共同開催で、大阪の会期は1/21～4/2だった。

近代日本画と言えば、主たる画壇はやはり東京と京都で、大阪は馴染が薄い方が多いかもしれない。
本展には前後期計50人以上の大阪を拠点とした画家の作品が約170点展示されており、これを観る事で、結果的に大阪ではどのような絵画が好まれ、描かれていたのかを掴め、ひいては何故大阪の日本画が馴染が薄いかも分るようになっている。
私は昔から北野恒富や島成園が好きで、特に後者は、その展示があれば飛んで観にいきレポートしてきた。本展では、北野恒富が17点、島成園が4点来ている(何れも前後期計)。

展覧会は以下の6章で構成されている。

第一章「ひとを描く～北野恒富とその門下」
第二章「文化を描く～菅楯彦、生田花朝」
第三章「新たなる山水を描く～矢野橋村と新南画」
第四章「文人画～街に息づく中国趣味」
第五章「船場派～商家床の間を飾る画」
第六章「新しい表現の探求と女性画家の飛躍」

第一章は「人物画」(含む美人画)、第二章は「風俗画」、第三章「山水画」、第四章は「南画」と言い換えてもいいだろう。

第一章のメインは北野恒富(つねとみ/1880-1947)、及びその系譜の画家達。
恒富は金沢出身、17歳で画家を志し大阪に出てきた。新聞小説の挿絵で人気を得、1910(明治43)年文部省美術展覧会(文展)で入選、翌年には3等賞を獲得、名前を馳せた。
大正期の作品に描かれた女性は頽廃的な妖艶美を持ち、「悪魔派」と評(揶揄)された。

《鏡の前》(1915)

黒字の着物の女性(芸妓か？)と鑑賞者の間には鏡が立っており、そこに写る自分の姿を上目遣いに見て女性は髷に櫛を刺そうとしているのだろう。この視る者との間の架空の設定により、センシュアルな関係に陥る。
顔に比して、身体は長過ぎる程にすらりとしていて、アールヌーボーを思わせる。
着物には飛天が描き込まれており、そのせいで女性も着物の中にある筈の足が地についておらずふわっと浮いているように見える。

昭和期に入ると、大阪風俗を加え、「はんなり」とした風情を描き込むようになる。
これは大阪人の好みに合わせた恒富の変化と言っていいだろう。

《宝恵籠》(1931頃)

1/10の「十日戎」に行われる「籠行列」に乗った舞妓を巧妙にトリミングしている。
周囲の人は「ほえかご」「ほえかご」と声をかけて、祭を盛り上げる。
大きめの華やかな簪をつけた芸妓になる前の舞妓、その初々しく、少し緊張した表情。

のち、北野は「東の清方(鏑木)、西の恒富」と迄言われるようになった。
1914(大正3)年には画塾「泊耀社」を結成、多くの後進を育て、多い時には70名を超える門下生を抱え、女性も多かった。

恒富の弟子の中に中村貞以(ていい/1900-82)がいる。
幼い頃大火傷を負い、両手の指の自由を失い、絵筆を両掌に挟んで描くようになった。

《失題》(1921)

脇息に両肘をつけ、崩して座る女性は、その朱色の着物が画面の殆どを占めるという大胆な構図。腰、肩、頭が連続する３つの円で構成されている。
服の皺にはナイフで切り込みを入れ、その縁に絵の具を盛って立体感を出している。模様はデザイン化したコウモリ柄。
顔はいわゆる美人画とは異なり、愛嬌がある。眼の化粧は上がピンク、下がブルーで、観る者を挑発するような眼差しである。
貞以は大正時代の「阪神間モダニズム」を牽引した画家とも評価される。

(続く)
　

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