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2023年12月31日08:06

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清水俊史『ブッダという男』

 清水俊史『ブッダという男 初期仏典を読みとく』(ちくま新書、2023年)を読了。仏典にはブッダについて様々な神話的記述が存在し、こうした描写は、かつては字義通りに受け入れられていた。しかし、近代に入って実証主義的な科学的知識やものの見方が浸透するに連れ、歴史的事実として信じることが次第に困難となっていった。
 ここにおいて仏典から歴史を抽出し、歴史的事実としてのブッダを明らかにするという新たな課題が浮上した。これが仏典の記述を批判的に検討する学問としての仏教学が登場だった。だが、仏教学者たちも「ブッダの教えは現代においても有意義であってほしい」という衝動には抗えず、現代を生きる理想的人格としてブッダを復元した。
 近代の仏教研究は仏典から神話的装飾を取り除いてブッダを平和主義者で、階級差別や男女差別を批判し、業や輪廻を否定した先駆的人物として描き出した。しかしながら、それは現代に創作された「新たな神話」に過ぎず、ブッダの歴史的意義は無我や縁起の主張にある。その教えは二五〇〇年前のインドにおいてそれまでの価値観を根底から覆す革命的な発見だった。
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