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2023年12月13日11:58

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BSで名画「鳥」「ローマの休日」「東京物語」

見に行こうと思ってた映画が1週間の上映で終わってしまって見損ねたので、先週からNHKーBSの映画をいくつか見ることになった。
いずれも「名画」と言われているものばかり。どれも劇場やTVですでに見たことがあるものであるが、何度も見たくなる作品である。

「鳥」(1963年制作)
ヒッチコック監督のパニック映画。
わたしが小学生の頃、叔父夫婦の家に遊びに行ったところ、庭の木の実めがけて、たくさんの野鳥が食べに来ていた。レンジャクという鳥で、わたしは無邪気に「わぁ、可愛いね」などと言ってたのだが、叔母は「おばちゃんね、以前、『鳥』っていう映画を見てから、鳥が沢山いるのを見るのが怖くなったのよ」と話すではないか。
その映画をわたしが実際に見たのは中学生になってからで、たぶんテレ朝系の「日曜洋画劇場」だったと思う(淀川長治さんが解説)。
たしかに普段はおとなしく弱い存在と思っていた鳥が、一斉に人間を襲撃する側に転じる恐怖は相当なものだった。
今回、何十年ぶりかで見たら、前半は、ヒロインと偶然出会った男性との恋のさや当てみたいな話なのだが(そういった部分はすっかり忘れていた)、後半、家の中に避難しても、屋根やドアを突き破って鳥たちが襲ってくる場面はさすがにやっぱり怖い。CGなど使わずとも、そして化け物やゾンビでなく、身近な「鳥」を恐怖の対象にするところは、さすがのヒッチコックの手腕。


「ローマの休日」(1953年制作)
言わずと知れた、オードリー・ヘップバーンの出世作。
欧州歴訪中の某国の王女が、宿泊先を抜け出して、1日だけの自由を得て、ローマの街を歩き・・といういわばファンタジーなのだが。
ただ、この手の「お忍びもの」って古くからあるテーマ。「暴れん坊将軍」とかもそのたぐいだよなあ。
ローマのご当地映画であり、ローマに旅行した女性の多くがきっと、スペイン階段でジェラートを食べてヘップバーンになりきってるんだろう。
でもラストシーンの記者会見のあと、会場を去るグレゴリー・ペックの姿にはやっぱり泣いてしまう。
多くを語らずとも、「アン王女」と「ブラッドリー記者」のあいだに、ゆるがぬ信頼があったことが、かえって切なくなる。
脚本を書いたダルトン・トランボは、悪名高い「赤狩り」でハリウッドを追われ、当時は他人名義だった。脚本に込められた「人間同士の信頼と友情を信じたい」というトランボの思いを考えると、またこの映画が味わい深くなってくる。


「東京物語」(1953年制作)
今年は、小津安二郎監督生誕120年ということで、よく作品が上映されているようだ。
ちなみに小津監督は、わたしの父方の祖父(1991年没)と同い年である。

尾道から上京して、東京にいる子どもたちをたずねた老夫婦(笠智衆、東山千栄子)。
しかし町医者の長男(山村聡)も、美容師の長女(杉村春子)も仕事が多忙なため、なかなか相手をしていられない。
長女は、戦死した次男の未亡人・紀子(原節子)に「1日相手をしてあげてよ」と「丸投げ」し、紀子は仕事を休んで、義両親を「はとバスツアー」に連れて行ってあげるのだ。
長男と長女は「熱海温泉」へ泊まったら、と両親を行かせるが、そこは安宿で、団体客が夜遅くまで騒いだり麻雀をやったりで、老夫婦はろくろく眠れない。
一泊して東京の長女のもとにもどった彼らを、長女は「もう帰ってらしたの?」とじゃけんに扱ってしまう。
結局、紀子が狭いアパートに義母を泊め、父親は旧知の男性(東野英治郎)らと酒を飲んで夜明かしする。
お小遣いまで渡してくれる紀子の気遣いに、母親は感激するのだった。

このあと、帰途に就いた夫婦だったが、母親のほうが具合が悪くなり、尾道に帰宅後、急死してしまう。

葬儀の後、形見をねだり、さっさと帰ってしまう長女。長男も帰京。最後まで残ってくれたのは紀子だった。
父親は紀子に「不思議なもんじゃ。本当の子どもでないあんたが一番ようしてくれた」と紀子に礼を言い、もう戦死した息子のことは忘れていいから、自分にきがねなく、再婚してくれ、というのだった。その思いやりに、紀子は顔を覆って泣く。

昭和28年当時の東京の風景が興味深い。
老夫婦と紀子が、銀座のビルの階段の踊り場から眺めやると、高層ビルは皆無で、国会議事堂が見える。
そしてもうすでに「親子といえど通い合わない心情」「家族関係のもろさ」を小津監督は描いていた。

驚くのは、70代かと思える父親・平山周吉を演じた笠智衆は、このときまだ40代だったこと!どう見ても「おじいちゃん」にしか見えないのだ。

帰路に就く両親を子らが東京駅に送りに行くが、「21時発廣島ゆき」の夜行列車で「名古屋あたりで夜が明けるでしょう」と言っている。
当時は地方からの上京は、一大事業だったろう。

わたしが「東京物語」をさいしょに見たのは大学の時だったと思う。
たしか市内の映画館で「小津安二郎特集」が組まれて、何本かまとめて観たのだ。
若い頃と違い、このトシになって観てみると、より「平山周吉」の心情に感情移入してしまう自分がいる。
「子どもはいなきゃいないでさびしい、いても自分から離れて行く。どっちもうまくいかん」という平山のセリフはなんとも印象的だ。
でもこの映画の一番の名セリフは、再婚をすすめ、「あんただって年を取るよ」と言う義母に、紀子が答える、
「わたし、年を取らないことにしてるんです」じゃないかな(*'ω'*)
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