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2023年08月15日14:08
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TBSK管弦楽団 第14回定期演奏会��
8/12(土)、ミューザ川崎シンフォニーホールで行われたTBSK管弦楽団の第14回定期演奏会を聴く。
これ迄第7回,第8回,第9回と聴いてきたのだが、その後、新型コロナやら台風やらとぶつかり、残念ながらしばらく聴く事ができずにいた。
TBSK管弦楽団て何？ という人や、彼等のプログラムのチャレンジングな特徴について知りたい方は、以下のリンクから第7回のレポートをご覧頂くか、今回のパンフレットの巻頭言をお読み頂きたい。
https:/
〈巻頭言〉
今回のプログラムのテーマは「劇伴音楽」である。
下はそのパンフレットの表紙だが、劇場の緞帳をデザインしたものらしい。
〈プログラム〉
1.《第六の幸福をもたらす宿》マルコム・アーノルド
2. 組曲《マ・メール・ロワ》モーリス・ラヴェル
3.《ウエストサイド物語》より〈シンフォニックダンス 〉レナード・バーンスタイン
〜休憩〜
4.バレエ音楽《ペトルーシュカ》(1947年版)イーゴリ・ストラヴィンスキー (*)
指揮 佐々木新平
ピアノ 西尾真実(*)
開演前に小人数でプレコンサートのサービスがあった。
プロコフィエフの《ロメオとジュリエット》第2組曲より第4曲〈踊り〉を管弦11重奏にて。
以下、プログラムの順を追ってレポートする。
1.《第六の幸福をもたらす宿》
1958年のアメリカ映画、邦題『六番目の幸福』の音楽の演奏会用編曲版である。監督はマーク・ロブソン、宣教師役の主役はイングリッド・バーグマン。物語は実話に基づいているとの事だ。
中国古来の教えでは幸福は５つの要素がある、つまり長寿、富貴、健康、道徳、天寿。そして6番目のそれは各個人が見つけ出すものだと。
マルコム・アーノルド(1921-2006)は英国の作曲家で、交響曲を9曲、様々な楽器のために協奏曲を12曲も書いているが、彼の名を一躍有名にしたのは映画『戦場にかける橋』(デヴィッド・リーン/1957)の音楽で、アカデミー賞作曲賞を受賞している。
私は今年3月の名古屋フィル第510回定期演奏会で、彼の交響曲第5番を聴く機会があった。
頻繁に採りあげられる曲ではないので、興味のある方は以下レポート参。
https:/
演奏会用に編曲したのはクリストファー・パーマー(1946-95)。
3つの楽章でできている。
・第1楽章 ロンドン・プレリュード
宣教師として中国に派遣される事を希望するグラディスがロンドンの中国伝道協会にやってくるところから物語はスタートする。
輝かしい鐘の音に続き、ホルンと弦の低音で力強い「決意の主題」。
宣教師の資格にまつわる困難を超え、グラディスはシベリア経由で中国に向かう事になる。
そして華やかな「愛の主題」の提示。
・第2楽章 ロマンティック・インタールード
中国に到着したグラディス。中国とオランダ混血の軍人リンとの出会いとロマンス。
フルートソロで始まる五音音階の旋律がアジア的情緒を醸す。それはチェロから各楽器に引き継がれる。
「愛の主題」は親密さを増す。
・第3楽章 ハッピー・エンディング
日中戦争のまっただなか、日本軍の攻撃はこの地にも及び、犠牲者が出る。
グラディスは50人の子供達を連れ、山越えで避難する事とする。
「決意の主題」に続き、ppで始まるスネアドラムの連打が導く行進曲《This Old Man》が繰り返される。
２つの異なる主題が重ねられてダイナミックにクレッシェンドし、ピークを形成する。
最後はもう一度「愛の主題」にてエンド。
2. 組曲《マ・メール・ロワ》モーリス・ラヴェル
古くからイギリスで口伝されてきた童謡・歌謡集。著名なものは17世紀の大英帝国時代に世界に広まった。
1697年、フランスのシャルル・ペロー(1628-1703)がそれらの中から８つをまとめて『昔ばなし』としてパリで刊行。口絵に「コント・ドゥ・マ・メール・ロワ」とあり。
1729年には英訳されて母国帰り。その時口絵は「テイルズ・オブ・マザー・グース」と書き変えられた。
この「マザー・グース」がのち本のタイトルになり、18世紀後半に世界で出版されるようになったと言われる。
ラヴェルはこの中から数曲を選びだし、1908〜09年、《マ・メール・ロワ》として作曲。オリジナルは、友人ゴデブスキ夫妻の子供ミミとジャンのためのピアノ4手用。
1911年に管弦楽用組曲として作曲家自身が編曲。本プログラムはこれである。
更に、テアトル・デザールの支配人ジャック・ルーシェの依頼に応え、同年から1912年にかけてバレエ用に編曲。順番を入れ替え、新たに前奏曲,〈紡ぎ車の踊り〉と5つの間奏部分が加えられた。
今回の曲は、以下の構成。
・第1曲〈眠りの森の美女のパヴァーヌ〉
4/4、レント。
ペローの童話集から「眠れる森の美女」を基に作った僅か20小節の曲。
妖精の呪いにより長い眠りについた王女。その寝台の周囲を宮廷の男女がゆっくりと踊る。
・第2曲〈親指小僧〉
4/2から3/4、4/4、5/4へ、とても中庸に。
ペローの童話集から「親指小僧(または一寸法師)」を基に。
家が貧しいため森に捨てられる事になった親指小僧は、来た道にこっそりパンくずを撒いて帰れるようにしたつもりだったが、鳥達に食べられてしまい深い森の中に迷ってしまう。
不安げな雰囲気の中、ピッコロで鳥の鳴き声が描写される。
・第3曲〈パゴダの女王レドロネット〉
2/4、マーチのリズムで。
ドーノワ伯爵夫人マリー・カトリーヌの『緑の蛇』を基に。
パゴダは陶器でできた中国製の首振り人形。
人形達の女王レドロネットが水浴中、パゴダの男女は手に手にそれは小さな楽器を奏で、女王を慰める。五音階の中国風のせわしない旋律が、フルートから始まり様々な楽器(各木管からシロフォン、チェレスタへ)に引き継がれていく。
・第4曲〈美女と野獣の対話〉
3/4、とても中庸なワルツのリズムで。
マリー・ルプランス・ド・ボーモンの『子供の雑誌、道徳的な物語』から「美女と野獣」を基に。
魔法使いの呪いで野獣に変えられてしまった王子と姫の対話。
姫はクラリネット、野獣はコントラ・ファゴットの重低音でコントラストを表現。
シンバルの一撃で魔法は解け、ハープのグリッサンドのあと、野獣は元の王子の姿に戻る(コンサートマスターのソロ)。
・第5曲〈妖精の園〉
3/4、レント･エ･グラーヴェ。
パンフレットによると、もう一度「眠れる森の美女」を基にしたとの説と、引用した４つの物語を総じたラストとしてイメージしたとの説(中村千晶)がある由。
ppからスタートし、ゆっくりと噛みしめるようなクレッシェンド、ハープに導かれてヴァイオリン、ヴィオラの美しいソロ。
一旦治まって、もう一度総奏でクレッシェンド、パーカッションも全員加わり、夢のように煌びやかな(殊にトライアングルのロールが溢れるような幸せを奏し)ffでエンド。
４つの物語の主人公達は、皆ハッピーエンドを迎える。
(続く)
これ迄第7回,第8回,第9回と聴いてきたのだが、その後、新型コロナやら台風やらとぶつかり、残念ながらしばらく聴く事ができずにいた。
TBSK管弦楽団て何？ という人や、彼等のプログラムのチャレンジングな特徴について知りたい方は、以下のリンクから第7回のレポートをご覧頂くか、今回のパンフレットの巻頭言をお読み頂きたい。
https:/
〈巻頭言〉
今回のプログラムのテーマは「劇伴音楽」である。
下はそのパンフレットの表紙だが、劇場の緞帳をデザインしたものらしい。
〈プログラム〉
1.《第六の幸福をもたらす宿》マルコム・アーノルド
2. 組曲《マ・メール・ロワ》モーリス・ラヴェル
3.《ウエストサイド物語》より〈シンフォニックダンス 〉レナード・バーンスタイン
〜休憩〜
4.バレエ音楽《ペトルーシュカ》(1947年版)イーゴリ・ストラヴィンスキー (*)
指揮 佐々木新平
ピアノ 西尾真実(*)
開演前に小人数でプレコンサートのサービスがあった。
プロコフィエフの《ロメオとジュリエット》第2組曲より第4曲〈踊り〉を管弦11重奏にて。
以下、プログラムの順を追ってレポートする。
1.《第六の幸福をもたらす宿》
1958年のアメリカ映画、邦題『六番目の幸福』の音楽の演奏会用編曲版である。監督はマーク・ロブソン、宣教師役の主役はイングリッド・バーグマン。物語は実話に基づいているとの事だ。
中国古来の教えでは幸福は５つの要素がある、つまり長寿、富貴、健康、道徳、天寿。そして6番目のそれは各個人が見つけ出すものだと。
マルコム・アーノルド(1921-2006)は英国の作曲家で、交響曲を9曲、様々な楽器のために協奏曲を12曲も書いているが、彼の名を一躍有名にしたのは映画『戦場にかける橋』(デヴィッド・リーン/1957)の音楽で、アカデミー賞作曲賞を受賞している。
私は今年3月の名古屋フィル第510回定期演奏会で、彼の交響曲第5番を聴く機会があった。
頻繁に採りあげられる曲ではないので、興味のある方は以下レポート参。
https:/
演奏会用に編曲したのはクリストファー・パーマー(1946-95)。
3つの楽章でできている。
・第1楽章 ロンドン・プレリュード
宣教師として中国に派遣される事を希望するグラディスがロンドンの中国伝道協会にやってくるところから物語はスタートする。
輝かしい鐘の音に続き、ホルンと弦の低音で力強い「決意の主題」。
宣教師の資格にまつわる困難を超え、グラディスはシベリア経由で中国に向かう事になる。
そして華やかな「愛の主題」の提示。
・第2楽章 ロマンティック・インタールード
中国に到着したグラディス。中国とオランダ混血の軍人リンとの出会いとロマンス。
フルートソロで始まる五音音階の旋律がアジア的情緒を醸す。それはチェロから各楽器に引き継がれる。
「愛の主題」は親密さを増す。
・第3楽章 ハッピー・エンディング
日中戦争のまっただなか、日本軍の攻撃はこの地にも及び、犠牲者が出る。
グラディスは50人の子供達を連れ、山越えで避難する事とする。
「決意の主題」に続き、ppで始まるスネアドラムの連打が導く行進曲《This Old Man》が繰り返される。
２つの異なる主題が重ねられてダイナミックにクレッシェンドし、ピークを形成する。
最後はもう一度「愛の主題」にてエンド。
2. 組曲《マ・メール・ロワ》モーリス・ラヴェル
古くからイギリスで口伝されてきた童謡・歌謡集。著名なものは17世紀の大英帝国時代に世界に広まった。
1697年、フランスのシャルル・ペロー(1628-1703)がそれらの中から８つをまとめて『昔ばなし』としてパリで刊行。口絵に「コント・ドゥ・マ・メール・ロワ」とあり。
1729年には英訳されて母国帰り。その時口絵は「テイルズ・オブ・マザー・グース」と書き変えられた。
この「マザー・グース」がのち本のタイトルになり、18世紀後半に世界で出版されるようになったと言われる。
ラヴェルはこの中から数曲を選びだし、1908〜09年、《マ・メール・ロワ》として作曲。オリジナルは、友人ゴデブスキ夫妻の子供ミミとジャンのためのピアノ4手用。
1911年に管弦楽用組曲として作曲家自身が編曲。本プログラムはこれである。
更に、テアトル・デザールの支配人ジャック・ルーシェの依頼に応え、同年から1912年にかけてバレエ用に編曲。順番を入れ替え、新たに前奏曲,〈紡ぎ車の踊り〉と5つの間奏部分が加えられた。
今回の曲は、以下の構成。
・第1曲〈眠りの森の美女のパヴァーヌ〉
4/4、レント。
ペローの童話集から「眠れる森の美女」を基に作った僅か20小節の曲。
妖精の呪いにより長い眠りについた王女。その寝台の周囲を宮廷の男女がゆっくりと踊る。
・第2曲〈親指小僧〉
4/2から3/4、4/4、5/4へ、とても中庸に。
ペローの童話集から「親指小僧(または一寸法師)」を基に。
家が貧しいため森に捨てられる事になった親指小僧は、来た道にこっそりパンくずを撒いて帰れるようにしたつもりだったが、鳥達に食べられてしまい深い森の中に迷ってしまう。
不安げな雰囲気の中、ピッコロで鳥の鳴き声が描写される。
・第3曲〈パゴダの女王レドロネット〉
2/4、マーチのリズムで。
ドーノワ伯爵夫人マリー・カトリーヌの『緑の蛇』を基に。
パゴダは陶器でできた中国製の首振り人形。
人形達の女王レドロネットが水浴中、パゴダの男女は手に手にそれは小さな楽器を奏で、女王を慰める。五音階の中国風のせわしない旋律が、フルートから始まり様々な楽器(各木管からシロフォン、チェレスタへ)に引き継がれていく。
・第4曲〈美女と野獣の対話〉
3/4、とても中庸なワルツのリズムで。
マリー・ルプランス・ド・ボーモンの『子供の雑誌、道徳的な物語』から「美女と野獣」を基に。
魔法使いの呪いで野獣に変えられてしまった王子と姫の対話。
姫はクラリネット、野獣はコントラ・ファゴットの重低音でコントラストを表現。
シンバルの一撃で魔法は解け、ハープのグリッサンドのあと、野獣は元の王子の姿に戻る(コンサートマスターのソロ)。
・第5曲〈妖精の園〉
3/4、レント･エ･グラーヴェ。
パンフレットによると、もう一度「眠れる森の美女」を基にしたとの説と、引用した４つの物語を総じたラストとしてイメージしたとの説(中村千晶)がある由。
ppからスタートし、ゆっくりと噛みしめるようなクレッシェンド、ハープに導かれてヴァイオリン、ヴィオラの美しいソロ。
一旦治まって、もう一度総奏でクレッシェンド、パーカッションも全員加わり、夢のように煌びやかな(殊にトライアングルのロールが溢れるような幸せを奏し)ffでエンド。
４つの物語の主人公達は、皆ハッピーエンドを迎える。
(続く)
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