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2023年05月16日12:39

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吉村武彦他編『陸奥と渡島』

 吉村武彦他編『陸奥と渡島』(角川選書、2022年)を読了。「蝦夷」とは日本列島の東北方に住み、王権に従わない人々を王権側が一括して呼んだ呼称だ。元々は人種や民族とは異なる政治的な他者認識なのだが、文化的な要素が付きまとってもいる。
 蝦夷についての記述は国史や当時の法令、更には出土文字資料など様々な史料に見られ、それらには貴重な事実を伝えるものが少なくない。蝦夷は獣肉を好み、狩猟を生業とする者も少なからずいた。その一方で倭人から手に入れた鉄で農具を作り、稲作を含む農耕を行った。
 また、蝦夷は「夷語」と呼ばれる言葉を話し、倭人との対話には通訳が介在した。彼らは墓制なども異にしており、その末期古墳は倭人の古墳文化から影響を強く受けているが、古墳時代が終わった後も、二百年以上に渡って独自の埋葬儀礼を保持し続けた。反乱・征夷があった時以外の平時には蝦夷と倭人の関係は割合に融和的で、東北北部にも地名や人名に古代日本語が広がり、蝦夷は土師器や竪穴住居など倭人の生活文化を大幅に取り入れた。
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