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2023年01月28日22:00

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ドキュメンタリー映画「ミスター・ランズベルギス」

「あなたの国はいったいどこに行こうとしているのか? 恐怖で世界を奈落の底にひきずりこもうとしているのですか? わたしはあなたの国のようにはならない」

この言葉、まさに、今、ウクライナ侵攻をつづけるロシアに向けられたものだと思うだろう。
だが、これは1991年、当時のリトアニアの最高会議議長・ランズベルギスが、ソ連に対して発した言葉である。
だからこそ、リトアニアの苦難の歴史は、普遍性を持つ問題なのだ。

このドキュメンタリーは、バルト3国のひとつ、リトアニアの独立運動を、当時のビデオ映像をまじえて構成したもの。
そして、現在のランズベルギス氏(1932年生まれ)へのインタビューが交互に入り、運動を振り返ってもらっている。
なんと4時間超の長さで、途中、10分の休憩がありました(;´∀`)。

冷戦末期の1988年、ソ連のペレストロイカを背景に、リトアニアにもソ連邦のくびきから脱して自由を求める動きが高まっていた。
そこで生まれたのが「サユディス」という運動体である。
ランズベルギスは音楽家で国立音楽院の教授だったが、この運動のリーダーとなっていく。

バルト3国は「合唱の国」と知られ、抵抗運動では民衆が歌を歌って一致団結する。
1989年8月には、多くの国民が参加して手をつなぎ「人間の鎖」を作って集結。

89年11月にはベルリンの壁が崩れ、東欧諸国は雪崩を打ったように民主化の道を歩き始める。
リトアニアも同様に民主化を求める。
ランズベルギスは年老いた父親から「わたしは無理だがお前の世代は、自由なリトアニアが見られるかもしれない」と言われたという(結果的には父親もそれを目にすることが出来たのだ)

1990年3月、リトアニアは独立宣言するが、ソ連邦からの脱退を政府は許さず、ゴルバチョフは宣言の撤回を要求。

ソビエト政府はついにリトアニアへの経済封鎖に踏み切った。
食料品は高騰し、リトアニアの民衆たちは苦悩を味わうが、それでも独立への機運はやまない。
1991年1月11日、ついにソ連軍がリトアニアの首都・ヴィリニュスを占拠し、死傷者も出る「血の日曜日事件」が起きる。
ランズベルギスは、ゴルバチョフも、ビリニュスでの武力行使を承知していたはずだ、と語る。

戦前、リトアニア共和国は独立国だったが、1939年のヒトラーとスターリンの秘密議定書により、バルト3国と、東欧を分割占領する密約をソ連は結んだ。
ランズベルギスらは、この議定書自体が違法だとして、当時の原本のありかをソビエト政府に詰問するが、ソビエト側はのらりくらりと、もうないとかわすだけだった。

1991年当時、アメリカは湾岸戦争にかかわっていて、リトアニアへの支援までは手が回らない状況だった。
だが、粘り強いリトアニアの人々の抵抗は、意外な事件で、急速に独立実現に向かっていく。91年8月のクーデター未遂事件である。
ゴルバチョフの生存は確認されたが、政治の求心力を失い、クーデター派も失敗に終わる。もうソ連邦という国は終焉に向かっていた。
8月23日、リトアニアは独立を宣言。
そして国連に加盟し、9月17日、ランズベルギス議長は、国連総会で高らかに独立を世界に告げるのだった。

30年以上前のニュース映像がわたしによみがえる。
そうだ、東欧諸国の激動の民主化運動とともに、バルトの独立運動も切実だったのだ。

朝ドラ「あまちゃん」の舞台のモデルでもある岩手県久慈市は琥珀の産地であり、「琥珀つながり」で、リトアニアの街・クライペダと姉妹都市だった。
当時、クライペダ市から久慈市にテレックスが入る。
「リトアニアの独立運動を助けてほしい」というものだったが、市の担当者は「外交問題だし、一地方都市としては対応をどうしたものか、困惑している」と、ニュース報道があったのを覚えている(その後、クライペダに支援物資を送るなどして、友好都市としての交流が続いたそうである)。

日本のある音楽評論家は、ランズベルギス氏とは古くから交流があった。
リトアニアの独立運動のニュースが伝えられ、ランズベルギス、という名前を目にし、「あのランズベルギスさんと同じ姓だ。親戚なのだろうか?」と思っていたら、まさにその人だとわかって、音楽家としての彼しか知らなかっただけに、腰が抜けるほど驚いたという。

大国に臆せず、独立運動を粘り強く戦い抜いたリトアニアの姿は、21世紀の我々にもいろんな教訓を与えてくれる。
この映画、4時間超という長さ、そして当日の大阪はかなり寒くて、これでは観客はわたし一人か?と思ったら、わたしを含めて3人でした(;´∀`)
知力、体力を要求される映画です。
(1月27日、第七芸術劇場)
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