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2023年01月27日11:57

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平野啓一郎著「死刑について」を読んで


照る日曇る日 第1854回

巻末には死刑についての世界各国の現状のデータが開催されている。すべての犯罪について廃止している国は108か国、通常犯罪のみに廃止が8か国、事実上廃止が28か国、そして日本、アメリカ、イラン、中国、北朝鮮などの存置国が55か国で、世界は死刑廃止の趨勢にあるといえよう。

「目には目を、歯には歯を」という、昔ながらの復讐感情は、我々現代人の中でも生き残り、滾り続けて止まないが、それを許せば古代同様のアナーキーに逆戻る。では国家による2番目の殺人を許容するのか、と言われればノンと言わざるを得ぬ。とすればやはり我々は殺人犯を殺さず、罪を悔悟し更生させなければならないのだろう。

以前は死刑存置派だった著者。しかし被害者家族に接する中で、被害者の視点から書いた長編小説「決壊」を書き終えた時点で、死刑反対論者に転向していく。そんな道行を振り返りながら語られる廃止論は説得力があり、読む者の心を深く刺す。

「国民はすべての基本的人権の享有を妨げられない。(中略)基本的人権は侵すことのできない永久の権利である」と憲法第11条で謳われているにもかかわらず、ニッポン人は人権意識が希薄であり、その「享有」を持て余して、権力の圧迫があればやすやすと返上しかねない脆さを大公秀吉の時代から堅持しているのであるが、人権と自立を中途で放り出す未開性こそが死刑存置論の本質なのだろう。

「ご臨終です」と宣告されたるおばちゃんが甥の「おばあちゃん!」に生き還りたり 蝶人

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