今日の午後は川崎に出かけた。東京交響楽団の演奏会に行くためだ。
プログラムは次のとおりである。
・吉松隆:チカプ
・吉松隆:チェロ協奏曲「ケンタウルス・ユニット」
・吉松隆:カムイチカプ交響曲(交響曲第1番)
指揮:原田慶太楼/チェロ:宮田大
会場:ミューザ川崎 (14:00 開演)
オール吉松隆プログラムである。今年は吉松隆の作品を聴く機会が多いような気がするが、今までは録音で聴くしかなかった曲を、生でいろいろ聴けるのでうれしい。「ケンタウルス・ユニット」は2回目、あとの2曲は生で聴くのは初めてだ。
まずは「チカプ」から始まる。「チカプ」とはアイヌ語で「鳥」のことであり、吉松隆といえば鳥である。もともとはフルート15本の曲として作られたらしいが、管弦楽版しか知らない。今日聴くのも管弦楽版だ。どんな曲か忘れかけていた作品なのだが、冒頭のフルートを聴いて思い出す。4本のフルートがポツリポツリと音を出し、鳥の声になっていき、そこにオーケストラが絡んでいく。どこか神秘的な雰囲気もあるような感じで、これはなかなか素敵な曲ではないかと再認識した。最後もフルートによる鳥のさえずりで静かに曲を終える。
続いては、チェリストの宮田大が登場し、「ケンタウルス・ユニット」だ。チェロ協奏曲である。人馬神一体となったケンタウルスのような音楽というか、混沌とした音楽という感じなのだが、一度生でも聴いているので、今日はじっくりとその混沌を楽しむことが出来るのである。本当に何がなんだかという感じで目まぐるしく曲想が変化するのだが、それぞれが表情豊かに流れていく。第2楽章のチェロも、作曲者のイメージしたとおり、琵琶の音のように聞こえた。最後は派手に締めくくる。宮田大のチェロはさすがというべき演奏であり、終演後には盛大な拍手となった。この拍手の中で、会場にいた吉松隆がステージ上に呼ばれ、さらに拍手が鳴り響く。まだプログラムの前半なのに、これで終わるかのような雰囲気になってしまう。
休憩のあとは「カムイチカプ交響曲」だ。「神の鳥」という意味であり、Ground、Water、Fire、Air、Rainbow と題した5つの楽章からなる。コントラバスによる静かな冒頭部分を受けて、じわじわと大地が浮かび上がってくるような第1楽章に始まり、各楽章に展開していく。こちらも混沌とした曲のようではあるのだが、それは吉松隆がこれまでに堆積した音の記憶を全て楽譜に留めたいとして作った交響曲なので、必然的にそうなるのだろう。第3楽章は打楽器群が大活躍だ。祭囃子のようにも聞こえてしまう箇所があったり、なかなか激しい楽章だが、そのあとクールダウンして、最後は静かに締めくくる。厳かな雰囲気に包まれたり、騒がしい世俗的な音楽になったり、神秘的な曲想が現れたり、やはり「混沌」の曲なのだろうが、生で聴いて十分に楽しめた。
演奏が終わり、しばらくの静寂のあと、盛大な拍手が鳴り響いた。この曲だけでなく、今日はどの曲でも、演奏が終わり指揮者が棒をおろしても数秒の静寂があり、指揮者が振り向いて初めて拍手が鳴った。余韻を壊されるようなこともなく、会場マナーも素晴らしかった。このあとも再び吉松隆がステージ上に登場した。このように作曲者にじかにお目にかかれるのも、現役作曲家の作品の演奏会の良いところである。
吉松隆はメジャーな作曲家だとは思うが、まだまだ作品の演奏機会に恵まれない日本人作曲家は多いと思う。こういうプログラムの演奏会も、もっと増えてほしいと思う。
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