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2022年03月05日10:29

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吉増剛造著「詩とは何か」を読んで


照る日曇る日第1715回

老いてますます盛んな活火山詩人によるライヴパフォーマンス的詩論なり。
どうも何回かの講演、あるいはフリートークを1冊の新書本にまとめたのだろうが、それならそうと説明してもらいたいものだ。

「詩とは何か」という設問に対して詩人は即答を避け、例せば義経が鵯越から逆落としに海に飛び込むような愚を避け、古今東西の詩人や作家、思想家を総動員し、持てる教養と蘊蓄と即興的な情動爆発を全面展開しながら、詩とは何かを問う行為自体が、すなわち詩のようなものであり、活ける詩活動そのものだということを体現し、証明しつくして見せる。

換言すれば、詩とは完成した作品ではなく、生命の原初のようなものであり、恐らくは福岡伸一が説く「動的平衡」のような生命体の無限運動、純粋言語、純粋音楽そのものなのだろう。

例示される詩魂の持ち主としては、エミリー・デッキンソン、カフカ、透谷、啄木、折口信夫、朔太郎、ジミヘン、サッチモ、ゴッホ、ベケット滔々等々であるが、結局は詩人が引用する道元の「朕兆未萌」という言葉に、究極の要諦が込められているのだろう。

偉大な先行者の生と作品の数々が走馬灯のように点滅しては吉増選手の知情意に還元されていく姿は、壮大詩想曼荼羅&パラノイア図であり、ある意味では凄絶極まりない生命の蕩尽と見える。

さはさりながら、著者がP228とP285で不用意に使っている「自閉症」という言葉は著者および編集者の知的怠慢で、もしも再版される折には「自閉的」と正されなければならない。
参考)自閉症の基礎知識→http://www.autism.or.jp/keihatsuday/about-autism.html

   世界中が反対すれど侵略を止めぬ男をいかにすべきか 蝶人


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