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2022年01月18日22:28

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ロジェ=ポル・ドロワ『虚無の信仰』

 ロジェ=ポル・ドロワ『虚無の信仰 西欧はなぜ仏教を怖れたか』(島田裕巳・田桐正彦訳、トランスビュー、2002年)を読了。十九世紀の西欧で仏教についての研究が進展すると、西欧の人々は仏教を虚無の信仰として怖れるようになった。仏教は個人の死に究極的な価値を置き、人権を無視して人間の生命を蹂躙する危険な宗教だった。
 十九世紀の西欧は労働者階級の誕生や民主主義への渇望、共産主義という名の妖怪、危険な階級の覚醒、ブルジョワ階級の「大いなる恐怖」などが歩き回っていた。ヨーロッパ人はそのような自分自身の不安や苦悩を仏教に投影した。そして、仏教を信仰するアジア人に問題の原因を押し付けた。
 十九世紀の西欧が空想のブッダに怯えつつ、生み出して育て上げた言説は、人種的な憎悪を浮かび上がらせて表面化させ、他者の蔑視と秩序への志向をあからさまに露呈させた。それは二十世紀の世界大戦と全体主義と強く共振する。「虚無の信仰」は確かに西欧を脅かした。
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