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2021年12月15日10:57

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ポール・ヴァレリー著・塚本昌則訳「ドガ ダンス デッサン」

照る日曇る日第1682回

踊り子の絵で知られる画家ドガと親交を結んだヴァレリー選手が、彼独自の絵画、ダンス論に加え、比類ない絵描きドガ選手についての思い出を書き記したいわゆる一つの哲学的コラムである。

デッサンとは何か?というヴァレリーの問いに対して、画家は「デッサンとはかたち(フォルム)ではない。それはかたち(フォルム)の見方なのだ」と答える。

このよく分からない警句に対して、ヴァレリーは、「かたち(フォルム)の見方とは、存在の仕方、力、知、意志などを含めたもっと広い意味で理解しないといけない」というのだが、やはり難解だな。

またヴァレリー選手は、長大な絵画史を、次のように要約してみせる。
「ある種の絵画がある時代に適合したとき、次の時代にはその適合が慣習と思われてくる。「変化のための変化」という悪魔は、私たちを美から真へ、真から純粋へ、純粋から不条理へ、不条理から平板へと投げ入れる」、と。

うん、これなら何となく分かるような気がするな。
今絵画は、長く続く平板の時代なのだ。

ポール・ヴァレリーが時折パスカル的な蘊蓄を垂れるのだが、そんな退屈な考察よりも、初版に収録されていたドガの美しくも醜い数多くのデッサンを鑑賞する楽しみによって、本書は従来の翻訳と大きな差をつけているようだ。

   我々の既得権が若者や女子の領地を奪っているらし 蝶人

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