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2021年03月12日12:14

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安彦良和『三河物語』

 安彦良和『三河物語』(中公文庫、2001年)を読了。江戸前期に旗本である大久保彦左衛門忠教が書き留めた『三河物語』のコミカライズ。原作を忠実に漫画化するのではなく、その背景を描くのに注力している。
 主人公を務める一心太助は、時代劇の映画や漫画で知られ、江戸っ子の代表とされる。架空の人物とされるが、東京にはその墓が建っており、彦左衛門の草履取りをしていたという記録もある。また、講談でも彦左衛門とコンビを組んでいる。
 そうした虚実を織り交ぜながら、本書は時代が戦国から泰平へと移り変わる様を描き、その時代状況に『三河物語』を位置付ける。侍に憧れる百姓の太助は時代に乗り遅れ、硬骨漢の彦左衛門は武断から文治へと移り変わる流れに取り残される。そのような彼らの関係や時代の流れが味わい深い読後感を与えてくれる。
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