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2020年12月07日13:07

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篠原悠希『マッサゲタイの戦女王』

 篠原悠希『マッサゲタイの戦女王』(光文社、2020年)を読了。マッサゲタイ王国の女王トミュリスを主人公とした歴史小説。地名や人名は可能な限り現地の言語に近付けているので、トミュリスはタハーミラィとなり、彼女と戦うペルシア皇帝キュロスも、ファールスの「諸王の王」クルシュとなる。
 タハーミラィはマッサゲタイ国王の妃となり、メディア帝国への使節に同行して帝都エクバターナに赴く。大国の首都で彼女は先進的な制度に触れ、メディア王の孫であったクルシュとも出会う。クルシュとの語らいによってタハーミラィは理想を抱くようにもなり、宮廷の陰謀や戦乱に傷付くが、それによって強くなってもいく。
 クルシュは史実においてタハーミラィに戦死させられるが、彼の死には矛盾する情報が伝えられており、本書はそれを巧みに組み合わせている。そのことが本作のバランスが取れたところに繋がっているのが上手い。マッサゲタイと対立するファールスを単なる敵とせず、その争いを昇華する結末に持っていったのが見事だった。
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