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2020年09月24日10:10

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「夢は第二の人生である」或いは「夢は五臓六腑の疲れである」第90回

西暦2020年卯月蝶人酔生夢死幾百夜

中国の銀行に一度入金すると帰ってこない懼れがあるので、私は金庫に潜入してそれがどこにあるか確かめることにしている。今回は「永久凍結」と書かれた麻袋に入っていたので一安心した。4/1

ある日、ふと思い立ってバスに乗って駅前の広場に行って、街角で思いの丈を歌ったら、自分の歌声が他人の声だったので、驚いた。4/1

「若い時には苦労をせにゃならん」と誰かが言うておったので、私はインドネシアの孤島のジャングルで独り暮らしをして、ひどい孤独にじっと耐え続けた。4/2

私の口から飛び出した数字は、数珠玉のように連なって、部屋の窓から出て、屋根を超え、空高く、登りに昇って、成層圏を離脱して、250万光年先の、遠く遥かなアンドロメダ星雲まで、続いていた。4/3

進駐軍に雇われた私は、南京虐殺に加担した、或いはさせられた兵隊からの聞き取りを、何冊もの帳面に書きつけたが、その内容は、彼らが家族はもとより神仏にさえ告白しないだろうと思われる、一読慄然とさせるに足るものだった。4/4

思いっきり辺鄙な山奥に移住して、およそ10年。毎日「ポツンと一軒屋」の取材が来るのを、今か今かと待ち構えているのだが、いつまで経っても、誰ひとりやって来ない。4/5

私は、ついに百年目に、その悪党と巡り合ったので、そいつを、ギタギタに八つ裂きにして、積年の恨みを晴らしたのよ。4/6

たまたま百人一首を暗記していたので、私は「素人かるた大会」で、全部の札を独り占めしたものだから、大勢の善男善女の、激しい恨みを買うことになってしまった。4/7

「自粛せよ、自粛せよ、なにがなんでも自粛せよ」と、その猪八戒に似た醜い男は、誰も聞いていないのに、ぺらぺらへらへら朝まで喋り続けるのだった。4/8

新幹線に乗っていたら、車内呼び出し放送があったので、受話器を取ると、死んだはずのサカイ君が、「2課の営業がやって来て「クラシックマガジンに2Pで280万円のタイアップ広告を出して欲しい」というてきているが、どうしますか?」と尋ねる。4/9

朝から晩までヘンデルを聞いていたら、頭がヘンデルになった。4/10

大阪の心斎橋そごうの子供服売り場の前で、子供が踊り狂っているので、何事かと思って近寄ってみると、私がつくったCMのビデオが売り場で放映され、ブルーハーツが「リンダリンダ」を歌っているからだった。4/11

コロナ騒動でガラガラの電車に乗ったら、向かい側の席に座っている客の、頭と胸と下半身はじっとしているのに、胴体だけが、左から右に猛烈な勢いで流れているのだが、これは恐らく最近証明された「ABC予想」の動かぬ証拠なのだろう。4/12

久しぶりに42度の高熱が出たので、検診してもらったら、案の定陽性だったが、医師も看護師もみな逃げ去ってしまったので、仕方なく私は帰宅した。4/13

私はコロナで生活に窮したので、自分の原稿には、従来の値段の他に著作権料5%をプラスして請求しようと思った。それはいいのだが、問題は、どこからもさっぱり注文が来ないことだった。4/14

コロナコロナ、自粛自粛で、窮死寸前にまで追い詰められた私は、完全にブチ切れ、全裸で公道に躍り出て、完全感染、他力本願、霊肉一体、酒池肉林の一大イヴェントに参加したのよ。4/15

またしても、突然の地震で、列島全体が完膚なきまでに破壊されてしまったので、コロナ騒動も、無かったことに、なってしまった、とさ。4/16

その小僧が、「おいらは1年間一生懸命福祉職員をやったから、来年は本来の仕事の寿司職人に戻らせてくれよ」と必死の面持ちで訴えるので、私は仕方なくそれを許してやった。4/17

有名な総合電機メーカーに雇われて、その会社が経営する「のんき村」の支配人になったのだが、その村の住人たちから、毎月いくら賃貸料を取ったらいいのか、誰も教えてくれない。4/18

私は勝手に教室のレイアウトを変えて、生徒たちを、好きなところに座らせ、私の指揮で私がつくった最新の曲を演奏させた。4/19

妻が「早く早く」と呼ぶので、急いで玄関先に出てみたら、春先のこんな日には珍しくナミアゲハでもクロアゲハでもなくアオスジアゲハでもない、黒い綺麗なアゲハチョウが花にとまっていたという。恐らく春型のカラスアゲハならん。惜しいことをした。4/19

「夢見る部屋」に入ろうとすると、入口が、「一般人用」と、「婦人用」の2つに分かれていたが、その理由は誰も知らなかった。4/20

匿名の篤志家に雇われた私は、衰えかけた「世界貴族連盟」の人々を救済するために、毎月米1俵に味噌醤油を添えて、地元の郵便局から世界中の貴族たちに送り届けていた。4/21

開拓者たちが、この公民館に到着してから、だいぶ時間が経つが、誰一人身動きもしないので、仕方なく私が台所に立って、雨水の湯を沸かし始めたところ。4/22

電車が驀進して来たので、仕方なく線路の下にある大鉄傘の上に滑り降りようと、何度も試みているのだが、果たして間に合うだろうか?4/23

「台湾の新幹線や地下鉄はみんな日本製だ」と、なんの根拠も無く言い放ってしまった私は、「ああまた放言しちゃったなあ」と後悔したが、時すでに遅かりし由良之助。4/24

宣伝課の春の社員旅行のバスに乗り遅れた私は、懸命に後を追いかけたが、あともう少しというところで、ギュンとスピードを上げたバスは、たちまち左側の壁に激突し、その場で大爆発を起こして、炎上してしまった。4/25

「だいたいよう、おらっち平民だけが、朝から晩まで汗水たらして働いて、糞高けえ税金を払ってるちゅうに、おめえたち坊主や貴族どもは、たらふく喰らって、1円も税金を払わないなんて、これほどおかしな話は聞いたこともないぜよ」と私がぶちかますと、彼らは逃げ去った。4/26

彼は、誰かに頼まれて「筍」という歌をうたったところ、その場の人たちがいたく感動して、100万円近い投げ銭をしてくれたので、「そんなことはよくあるの?」と聞いたら、「たまにありますよ」と答えた。4/27

「皆さん、この紅い小さなポーチの中に、10億円が入っています。吉原のトルコ嬢が何十年もかかって貯めた汗と涙の結晶です」とその男が言うたが、くだんのトルコ嬢との関係は分からなかった。4/28

その茶室には、いつもさっきまで主人と客人が対坐して喫茶していた気配が残っているのだが、何度訪れても無人であり、いわば「無の定型」とでも称すべき空間を構成しているのだった。4/29

「1日」、「2日」、「3日」と清書されて順番に並んでいる標的を、私は、ただただ機械的に、射撃していた。とてつもなく消耗だった。4/30

   テレマンの無伴奏フルート聴きおれば宙外に遊ぶ心地こそすれ 蝶人

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