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2020年08月24日11:22

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岩波文庫版・中地義和編・対訳「ランボー詩集」を読んで



照る日曇る日第1449回

岩波文庫から出始めたフランス詩人選の第1冊であるが、これから左に原文、右に邦訳を律儀に並べた叢書がアメリカ詩人選と同様に陸続と刊行されるのだろうか。恐ろしいような楽しみなような企画である。

さてランボー(1854-911)であるが、この人は10代半ばから20歳までのわずか5年間しか詩を書かなかったにもかかわらず、あの超ややこしい規則だらけのアレクサンドラン体韻文詩から現代的な口語自由詩まで、あたかもヘッケルの法則のように、全地球詩の系統発生を一個体の肉体と精神に凝縮して再現したような奇跡的進化の姿を観察することができる。

わが小林秀雄や中原中也の翻訳では自由奔放な空想や抒情の歌とばっかり思っていた「最も高い塔の歌」や「永遠」や「季節よ、城よ」が、厳密なコードによって規矩された正統的な韻文詩だときかされると、意外の感にも打たれるが、パリ・コンミューン崩壊後の72年2月作の「ジャンヌ=マリの手」においても、不滅の革命魂の顕彰が8音節、交叉韻という自縄自縛の下で行われているのである。

1875年10月14日のドラエー宛の書簡に、「夢」という戯曲断片のような決別の詩句を書きつけた瞬間、夢見る詩人ランボーの生涯は終了し、あとはその詩の実行家としての険しい生活が始まった。

   一日中ヘンデルばっかり聴いてたら頭の中がヘンデルになった 蝶人


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