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2019年12月31日20:31

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気儘徒然句鑑賞五十二

背信のじとっと濡れた靴を履く(筒井祥文)
 筒井祥文川柳句集「座る祥文・立つ祥文」より。
 背信と濡れた靴が心理的に近いので、句会に出句された句なら愚生の選には入れないだろう。
 だがそれにしても、じめじめとした濡れた靴の心理的効果は侮りがたい。何に対する背信なのかは読者に預けられている。普通、多様な読みの成立する書き方は、怠惰な読者を通過させてしまうものだが、濡れた靴の体感がそれを防いで余りある。
 一端、句の前で立ち止まれば、読者は蟻地獄にはまった虫けらのように、人生の様々の場面で引き起こした背信の記憶をたどることになる。悪夢の一句。

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