mixiユーザー(id:21379232)

2019年10月24日16:05

50 view

柿谷均『ニコメディアの館』

 柿谷均『ニコメディアの館』(デザインエッグ、2019年)を読了。ディオクレティアヌスとコンスタンティヌスの治世を題材とした歴史小説。著者は多神教の古代から一神教の中世へと西洋が転換した古代末期に関心を持ち、キリスト教を迫害したディオクレティアヌスとキリスト教を公認したコンスタンティヌスが取り上げられている。
 本書は史実の隙間を創作で埋めて読みやすい物語に仕上げ、読者が古代末期に興味を抱いてくれることを目指している。ただし、その創作は抑制的で、話はあっさりとしているぐらいだ。その抑制された創作は、アルメニア王ティリダスやニコメディア司教アンティムスのエピソードを自然に脚色している。
 もっとも、作者が影響を受けた塩野七生の史観がたまに文章から臭って鼻に付く。参考文献にも『ローマ人の物語』が挙げられている。「背教者」ユリアヌスの理解もギボンや辻邦生から抜け出ていない。
1 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する