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2019年10月23日09:53

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安藤礼二『列島祝祭論』

 安藤礼二『列島祝祭論』(作品社、2019年)を読了。列島で最古の聖典である『日本書紀』は神道と仏教を一つに習合する道教的な「王」として天皇を位置付け、それを理論的に整えた天武天皇は、自らの身で実践もした。役小角を始祖とする修験道は、そのような習合の理論と実践、教義と行法の体系を総合し、アジアに生まれた諸宗教を一つに融合させた。
 修験から生まれた空海は、それが開いてくれた未曾有の体験を密教の論理によって鍛え上げ、ある種の普遍にまで導いていった。空海とルーツを共有している最澄は、円教と密教を総合しようとし、彼の法統を継いだ者たちは、仏教と神道を習合する理論も磨き上げた。源信は如来蔵思想を基盤として禅と浄土、法華と華厳、円教と密教の総合を成し遂げ、真言の即身成仏思想は天台本覚思想へ押し広げられていった。
 一遍は本覚思想を生み出した天台の孕み持つ可能性の全てを集約させ、修験道的な神仏習合や密教を総合し、踊り念仏を唱えて実践した。様々な対立を無化して一つに結び合わせる一遍の踊り念仏は、「異類異形」の「悪党」たちとも交わり合った。後醍醐は宗教を介して政治と芸術を共振させ、芸能の力によって「異形異類の怪物」を自身の下に糾合し、現実の秩序を転覆させたが、明治の維新も建武の新政にまで遡る。
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