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2019年10月17日17:49

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大木毅『独ソ戦』

 大木毅『独ソ戦 絶滅戦争の惨禍』(岩波新書、2019年)を読了。ドイツが遂行しようとした対ソ戦は、人種主義に基づく社会秩序の改変と収奪による植民地帝国の建設を目指す世界観戦争で、かつ「敵」と定められた者の生命を組織的に奪っていく絶滅戦争でもあった。ドイツ国防軍は軍事的な観点から対ソ戦もやむを得ないと考えており、東部戦線で行われたジェノサイドにも関与していた。
 最初、対ソ戦は通常戦争・収奪戦争・世界観戦争(絶滅戦争)の三つが並行する形で進められたが、通常戦争での優勢が危うくなると、収奪戦争と絶滅戦争の比重が大きくなった。敗勢が決定的になると、通常戦争が「絶対戦争」に変質し、絶滅戦争と収奪戦争に包含され、史上空前の殺戮と惨禍をもたらした。陸軍総司令部が立案した対ソ作戦は、敵の実力を過小評価したのみならず、自らの兵站能力を無視し、杜撰なものでしかなかった。
 ソ連軍は人的・物的な資源ばかりか、独ソ戦の中盤以降、作戦術に基づく戦略次元の優位によりドイツ国防軍を圧倒した。ソ連にとっての対独戦は共産主義の成果を防衛するのが祖国を守ることであるとの論理を立て、イデオロギーとナショナリズムを融合させて国民動員を図った。かかる方策はドイツの侵略を退ける原動力となったが、敵に無制限の暴力が発動されるのを許し、中・東欧への拡張はソ連邦という掛け替えのない祖国の安全保障に必要不可欠であるとの動機付けにもなった。
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