mixiユーザー(id:21379232)

2019年10月04日16:12

65 view

手塚治虫『火の鳥 黎明編』

 手塚治虫『火の鳥 黎明編』(角川文庫、1992年)を読了。その生き血を飲めば、不死になれる「火の鳥」を巡るシリーズ漫画の第1作で、邪馬台国と日本神話が題材となっている。
 邪馬台国の女王である卑弥呼にはアマテラスが重ね合わされ、スサノオやサルタヒコらも登場し、倭国大乱を背景に様々な人間のドラマが繰り広げられる。最終的に邪馬台国は渡来人の騎馬民族を率いるニニギに滅ぼされ、彼が神武天皇のモデルになったと解釈されている。これは騎馬民族征服王朝説を下敷きにした展開で、当時、その説はセンセーションを巻き起こしていたらしく、イデオロギーの是非はさておき、それをエンターテイメントに仕上げてみせた著者の力量は流石だろう。
 しかも、本書は征服者のニニギを単なる悪の侵略者としていない。確かにニニギは残虐非道な専制君主だが、「火の鳥」を前にし、「永遠の生命? ふん、そんなものがなんの役に立つ? 火の鳥よ、おまえを祝福してやるぞ。おまえが不老不死ならこの征服者ニニギのことを子子孫孫まで伝えるがいい!」と言ってのける。同じく非道な君主である卑弥呼もサルタヒコに命懸けで慕われており、単純に割り切れないところがストーリーに厚みを与えている。
0 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する