今日は、天王洲にピアノ音楽を聴きに行った。吉岡裕子さんによるウルマス・シサスクの「銀河巡礼」全曲演奏会の第1回である。このあと、11月、1月、3月と、計4回で全曲を演奏するのである。
ウルマス・シサスク(1960- )はエストニア出身の作曲家である。幼少より天体観測に興味を持ち、その作品は宇宙や星にちなんだものばかりである。シサスクのピアノ曲の第一人者といえば吉岡裕子さんだ。シサスクと直接交流もあり、吉岡さんのために作られた曲もある。そのシサスクが「全ての星座をピアノ曲にする」として取り組んだ「銀河巡礼」が、40年の歳月をかけて昨年完結した。そこで、第1集から改めて全曲演奏しようということになったという。
今日のプログラムは以下のとおりである。
・シサスク: 銀河巡礼第1集 北半球の星空 (全曲)
ピアノ:吉岡裕子/語り:高木宏道
会場:KIWA TENNOZ (17:30 開演)
日入の時刻に演奏会が始まる。したがって、4回の演奏会は開始時刻もバラバラだ。そういうところにもこだわりがある演奏会なのである。会場もこぢんまりとしたライブハウスであり、「いかにもクラシック音楽」というような雰囲気ではないのもよい。
第1集「北半球の星空」を全曲通して生で聴くのは、2011年12月以来である。この時の演奏も吉岡さん。吉岡さんのピアノで聴くシサスクは、その時から始まったと思う。
ピアノ演奏に合わせて、写真家有賀哲夫さんの撮影による星空の写真がスクリーンに映し出される。そして、高木さんの語りによる、それぞれの曲にまつわる物語(北欧の神話など)をはさみながら、演奏が進んでいく。そのことによって、イメージが何倍にも膨らむ。
幕開け前に、シサスクの「カシオペア座」が鳴り響く。最初は吉岡さんの姿は見えないが、徐々に幕が上がり、吉岡さんの背中が見えてくる。プログラムにない「カシオペア座」で始まったが、ここから先は「北半球の星空」だ。
曲目は次の通りで、ちょっと長いけど全部書き出す。
第1章
・みずがめ座 「夢」
第2章
・こぎつね座 「不安」
第3章 「天の川〜シラカバとモミノキ」
・いるか座 「連鎖−流星雨のプレリュード」
・おおいぬ座 「性急」
・かみのけ座 「転変−オーロラ」
第4章 「カレワラ伝説〜ヴァイナモイネンの膝の傷」
・くじら座 「切望」
・アンドロメダ座 「力−雷雨、虹」
・うしかい座 「渦」
第5章 「オスチャーク族の昔話〜兄と妹」
・うさぎ座 「孤独」
・はと座 「動き」
・おうし座 「鮮鋭」
第6章 「ヴォルグ族の伝説〜天空の館」
・へび座 「出現」
・や座 「動揺」
・からす座 「風雪」
第7章 「幸福の物語」
・こと座 「幸福」
第8章 「カレリア地方の創造神話」
・7つの楽興の時 「プレアデス」
−エレクトラ
−マイア
−タイゲタ
−アルキオネ
−メローペ
−アステローペ
−ケレノ
第9章 「カレワラ伝説〜ポホヨラの女主人ロウヒの魔法の水車」
・おひつじ座 「緊迫」
・へびつかい座 「破滅」
・こぐま座 「平和」
第10章 「カレワラ伝説〜カレワラの英雄たちの逃走」
・こいぬ座 「混乱」
第11章 「ケート族の伝説」
・オリオン座 「凝固」
・うみへび座 「無限」
・ペルセウス座 「黙想」
曲目を全て書き出したのは、そこに書かれている言葉がまさに曲のイメージであり、これ以上の余計な説明は不要だからである。星座についての知識が乏しい私でも、ピアノの音に耳を傾けていると、シサスクの描く宇宙がイメージ出来るのである。映像や語りによる効果もあるが、吉岡さんのシサスク作品に関する深い共感と完璧なテクニックがあるからこそであることはいうまでもない。第1集は生でも録音でも吉岡さんのピアノで全曲聴いているが、初めて聴いた時に比べても、ずっとイメージが膨らみやすかった。
第7章のあと休憩が入ったが、この前半が終わるまで、吉岡さんは顔を全く見せず、白いドレスの背中だけが見えて、その前方には星空の写真。これがまた、神秘的な雰囲気を醸し出していたかもしれない。
会場を出る際に吉岡さんに挨拶。「初めて聴いた時よりもずっとイメージが膨らんだ」ことなどをお伝えした。
次回の11月の「南半球の星空」も楽しみである。
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