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2019年07月23日15:55

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映画「工作~黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男」

1992年、北朝鮮の核開発が疑われ始め、韓国軍将校のパク・ソギョン(ファン・ジョンミン)は北へ潜入して核兵器機密を探ることを命じられた。
彼はあえてギャンブルにうつつをぬかしたり借金を重ねたり、「生活が破綻して軍を追放された」ふりをする。
国家安全企画部チェ室長(チョ・ジヌン)からの指令で実業家になりすまし、パクは北京へ。パクのコードネームは「黒金星(フックムソン)」。

北朝鮮の対外経済委員・リ所長(イ・ソンミン)は、キム・ジョンイルとも面会できる実力者だ。まずはリ所長に接近しようとパクは画策、そして1995年、リ所長から北京の朝鮮料理店で面会の連絡が。
対外経済委員会は当時多額の外貨が必要で、金回りのよさそうなパクに目を付けていたのだ。
だが、いつもリ所長に同行している軍人のチョン課長(チュ・ジフン)は、「南の情報をくれ」と迫った。
パクはチェ室長に相談、古くて公開してもさほど価値のない「情報」を持参する。

話し合いを重ねるうち、本来北と南のまったく相いれないはずのパクと、リ所長に信頼関係が生まれ、パクは北での広告展開を提案。
北朝鮮の景勝地をバックにした韓国のコマーシャルは斬新だし、北にもかなりの金が入るはずだ。

パクはなんとあのキム・ジョンイルとも面会を許され、「将軍様の目を見て話してはいけない」と忠告されつつも、ついその顔へと視線が動いてしまった。
ピョンヤンや白頭山(ペクトゥサン)へも広告撮影の下見、という名目で足を延ばす。
核開発をしているという寧辺(ニョンビョン)にも近づこうとするがなかなかむずかしい。
しかし、パクは町のそこかしこで餓死した人民が弔いもされずに、うち捨てられている様子を目撃。
同行した北の案内員は悲しみと怒りをこらえ
「わたしは祖国を愛しています。でもこうして多くの人が餓死しているのです」とパクにそっとつぶやくのだった。

パクはリ所長の自宅にも招待された。
酒を酌み交わし、ふたりのあいだにはイデオロギーを超えた友情さえ芽生えていた。
しかし、国家権力というのは複雑怪奇。
1996年の韓国総選挙の直前、38度線で北は軍事挑発。
不安に思った韓国国民は保守党に投票して、金大中の野党は敗北。
これは韓国の与党があえて挑発を北に依頼したのだという。
「親北」と言われる金大中に与したほうがよさそうなものなのだが、北は北で南の政治家を利用したいと画策したようなのだ。

そして1997年の年末、韓国大統領選挙がはじまった。
金大中有利、との情報に、またぞろ「北の挑発行動」を、と体制側はもくろむが、当選したのは金大中。
それは前政権下の国家安全企画部が解体されることを意味した。
パクの今までの潜入スパイ活動は何だったのかー?

実在のスパイを元にした映画、ということだが、国家の最高機密だけに、どこまでがフィクションなのか、見ていても判然としない。
だが、「権力ってイデオロギーなんか関係ない。結局はカネとチカラ」というのをひしひしと痛感させられる。

「国際市場で逢いましょう」では、心優しい韓国の父親を演じていたファン・ジョンミンが、一転、非情なスパイの世界の人間に。
とはいえ、わざとダメ人間に身をやつし、金満実業家に転身して北の中枢部に潜り込む、なんてあまりにも映画チックな人生だ。
国家の命令とはいえ、そこまで出来るものなのだろうか。
リ所長役のイ・ソンミンは、わたしはずっと梅沢富美男に見えてしょうがなかったんだが(笑)、クールで冷徹のようでいて、内実は人情家、というキャラクターを演じ、いちばん印象に残った。
ちなみにファン・ジョンミンは西島秀俊に見えるわたしです。
キム・ジョンイルを演じたキ・ジュボンのそっくりさんぶりも見事。
(7月22日、シネマート心斎橋)
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