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2019年06月06日13:16

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遠藤周作『鉄の首枷』

 遠藤周作『鉄の首枷 小西行長伝』(中公文庫、2016年)を読了。関ヶ原の戦いに敗れて刑死したキリシタン大名である小西行長の評伝。行長に史料は乏しく、イエズス会の報告書も活用されて彼の生涯が描かれる。
 本書で行長は豊臣政権に面従腹背し、保身と信仰の狭間で苦悩する人物として表現される。これには戦中・戦後の日本社会をキリスト教徒として生きた著者の人生が反映されている。それゆえにか、行長の出身地である堺を商人たちの都市共和国として描き、「西欧」の「市民」に近く思われる都会や町人と比べ、田舎や武士にネガティブな表現を使用するなど日本の典型的なインテリゲンチャの習性を感じさせる。
 しかし、本書は単なる身贔屓に終わるものではない。著者にとって保身と信仰の苦悩は自身の問題でもあり、作中の偏りは彼が主体的に作品を書いたことの裏返しだろう。そして、それは形が異なれど、キリスト教徒でない者にも起こり得る。
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