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2019年01月20日09:11

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ドナルド・キーン著作集第15巻「正岡子規 石川啄木」を読んで 



照る日曇る日 第1192回

ともかくキーン翁の伝記シリーズは読み応えがあって退屈なはずの明治天皇の2巻だってクイクイと読ませてくれました。この2作はいずれも以前に読んで感銘を受けた本ですが、全集に採録されたので再読してみました。

子規と啄木の共通点は、2人がいずれも結核で夭折した文学者であることと、小説家を目指して挫折した思いを短詩敬文学に振り向けて後世に大をなしたこと、にあると思いますが、それほど時代がずれていないにもかかわらず、著者が指摘するように、子規は「近代」に、啄木は「現代」に軸足が置かれていたような気がします。

啄木は、その短すぎた晩年に、大逆事件を経てアナーキズムと社会主義に傾斜しましたが、、もし子規が健康で、本来の志望であった政治家になったとすれば、ともどもに左傾して手を携え、日本政治史の流れを大きく変えていたかもしれません(その代わりにわが文芸史もそのあおりを蒙ったことでしょうが)ね。

それにしても上司に恵まれ、朝日歌壇の選者に抜擢されて経済的にも安定し、机に向かえばたちどころに短歌が迸り、苦手の小説すら連載、単行本化が相次いでいた文学界の若き旗手に、妻の不倫騒動とかの死病なかりせば、どのような珠玉の作物が後世に遺されたかと、長嘆息せずにはいられません。


 全国民をハラハラドキドキさせるためキセノサトは土俵に上がった 蝶人


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