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2018年12月25日11:15

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安西水丸作・画「水丸さんのゴーシチゴ」を読んで 

照る日曇る日 第1183回

水丸さんが俳句を読む人だとは知らなかったので、たいそう驚きました。
親友だった嵐山光三郎選手の序文も胸を打ちますが、「あとがき」を書いているのが平山雄一選手だったので、また驚いた。

道造も中也も一人風車
いい奴が不良ぶってるネギ坊主
待つよりは待たせる辛さ春の月
雨ゆきて蜘蛛の圍真珠つらねおり
里山に遠く笛きく祭かな
佐原なる小江戸歩きや遠花火

私がポップスに夢中になってコンサート通いをしていた2年間、毎晩のようにご尊顔を拝し奉った音楽評論家は、なんと吉田鴻司氏に師事した俳人で、水丸さんと一緒に吉田氏が主宰する俳会に出ていたというのです。

立秋やうたたね女のふくらはぎ
夕立や左のピアス探してる
光る歯のビーチボーイはよろしくと
ポケットの穴に指ふれ九月の雨
秋の水に映りし空を鯉泳ぐ
女朗花庭のいつもの場所に咲く

句集の中ほどには、作者の事務所があった青山近辺の手描きの「散歩地図」がありますが、「嗚呼、彼はここら辺を毎日散策していたんだあ」と、やにわにありし日の故人の面影が浮かび上がってきました。

青蜜柑ころがる先の日向かな
朝の夢セーターの中で想い出す
山茶花や今日また咲いてまた散って
北風や習いはじめし触太鼓
姿見には初湯まといし裸身かな
夏の蝶追うて果てなき空の青

昨今の俳人というより廃人の抹香臭い作風と正反対の清新な詠みぶりは、さすが水丸選手。一句ごとに色鮮やかな画伯の挿絵付きで、未発表のものも多いのです。

なにを隠そう、私は潰れた下駄屋の3代目なので、最後はこの2句にて締めたいと存じます。

泡雪や下駄の音ゆく上七軒
酔いざめに芸者の下駄のあざやかさ

  本当に世の中が変わるのではないかと思ったよ1960年 蝶人

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