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2018年10月12日11:00

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ペネロピアド/マーガレット・アトウッド

 「貞淑な妻」の鑑とされたペネロペイアと、結末で絞殺された彼女の12人の侍女たちを語り手として再話された、「オデュッセイア」異聞。軽やかで意地悪く、黒い笑いに満ちた神話のパロディとして楽しめるが、こうして改めて見直すと、原典の血生臭さに鼻白む。『イーリアス』の大戦争よりも、ドメスティックな場で行われる求婚者たちの虐殺と、彼らに内通したとして英雄の手で絞首される乙女たちの死に様は、惨たらしい。

「…茂みに懸けた網の罠にかかるがごとく、女たちは首を一列に並べ、世にも惨めな最期を遂げよとばかり、どの女の首にも綱が巻きつけられている。暫くはびくびくと足をもがいていたが、それも長くは続かなかった」

本書でも冒頭に引用される「オデュッセイア」22歌。女神がたびたび介入する叙事詩において、この描写の生生しさは突出していて、その違和感がアトウッドに本書を書かせたのか。
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