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2018年10月11日00:07

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[観劇]ソコナイ図/dracom

@ウィングフィールド。
豊中市で起きた元資産家姉妹孤独死事件に題に採った作品。
最初に、「よろしくお願いします」と小声で言って、横たわる二人。
こういう始まり方をする演劇はちょっと珍しい。
二人の横には十数通の封筒が積み重なっているが、舞台上の小道具はそれのみ。
OPらしき音楽は流れるも、そのまま伏して黙したままの5分が経過したあたりで、初めて、台詞が発せられる。倒れた妹は、同じく動かない姉を気にしながら、
外で流れる除夜の鐘に聞いていた…。
セリフは終始、淡々と、抑揚少なく、途切れ途切れに発話される。
途中、市役所の担当官や執行官も闖入するが、演技は同様に、人工的かつ抑制的。
高額の相続税に苦しむ姉妹にマンションを売りつけて、その苦境を更に悪化させる、
セールスマンのトークだけが流暢かつ過剰で、浮いている。
死にかけている妹、死んでしまった姉の間で会話は一切無く、上述の闖入者たちを除き、
各々30分程度の間隔で、交代しつつ、己のパートを物語る。死んでしまった姉は時間を超越した存在として、過去を振り返り、部屋の外を歩きまわりもするが、いままさに死につつある妹は、除夜の鐘を聴きながら、「死」という極限点をひたすらに見つめようとしているかのようだ。空っぽの自分を自覚しながら、
手に握りしめた5円玉だけに自分の生存を実感する独白には、鬼気迫るものがある。

劇全体のトーンは非常によくコントロールされていて、動きの少ない100分間を静かな緊張感で満たしている。
ただ、それでもなお、もっと刈り込む余地はあると感じた。
市役所職員などの外部情報は捨象して、抽象度を高めた方がよいのではないか。
年末のアパートの一室、生死の線上にある姉妹、それだけで演劇は成立する、と思わせてくれる凄みが、確かにこの作品には感じられたのだから。
始まりと終わりに、5分以上沈黙の時間を置くような、演者にも観客にも負荷の大きい、その割に見え透いた演出も不要と思う。
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