照る日曇る日 第1082回
昔から映画では小津安二郎、山田洋次、最近では是枝裕和、テレビドラマでは山田太一、坂元裕二などがこの国の「家族」のありよう、を見つめてきたが、岡崎京子のこの作品などは、その視線の鋭さと深さにおいては、先行者たちのそれを遥に突き抜けているのではないだろうか。
父親の家族離脱からはじまり、母、そして13歳のヒロイン鈴木るみ子に及んでくる家庭と家族崩壊のドミノゲームは、作者が述懐するように「愛していながら愛することができない。愛したいけど愛せない。でも永遠に続くアンビバレントな反復横とび」そのものだろう。
「家はあっても家はなく、親はいても親はない」というこの奇妙奇天烈な状況を、われらがヒロインは、「サイズに合わない靴を投げ捨て、熱砂の中を裸足で進んでいった無謀なデートリッヒ」のように突進していく。
物語の最後で、マツダと「ハッピィ・ハウス」のようなものを組みあげた鈴木るみ子は、本作発表後26年の今日、いったいどうなっているのだろうか?
道端の発掘現場に佇めば鎌倉時代の井戸の底みゆ 蝶人
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