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2018年06月14日18:32

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マーク・マゾワー『バルカン』

 マーク・マゾワー『バルカン 「ヨーロッパの火薬庫」の歴史』(井上廣美訳、中公新書、2017年)を読了。南東ヨーロッパはかつてオスマン帝国領で、「ヨーロッパ・トルコ」あるいは「ヨーロッパにおけるトルコ」という名称で知られていた。この地域が「バルカン」という名称にて知られるようになる時期は、今日のバルカン諸国を構成する民族や国民が生まれつつあった時代と一致する。
 それまでは宗教がアイデンティティの拠り所とされ、オスマン帝国の宗教別支配はイスラム教徒やキリスト教徒の対立を煽る決定的な要因とはなり得ず、人々は数世紀に渡って比較的平和に共存してきた。それゆえ、バルカン半島の中では多種多様な民族が入り混じって共生していたが、ナショナリズムが西欧から輸入されると、民族自決の原則に従って近代国家が誕生した。しかし、バルカンが置かれた歴史的状況で万人を満足させる国境線を引くなど到底不可能で、バルカン諸民族は互いに熾烈な争いを展開した。
 そうしてバルカンには野蛮な暴力行為の数々や極度に排他的かつ暴力的なナショナリズムの台頭でイメージされるようになった。西ヨーロッパはバルカンをオスマン帝国のせいで野蛮になった後進地域と捉え、ヨーロッパとは異質なところであると見なした。だが、列強がバルカンの暴力に果たした役割は、決して小さいものではなく、バルカン諸国が他国以上に残酷であるとは言えない。
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