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2018年03月04日21:57

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小川洋子「沈黙博物館」

死者の「形見」を展示する博物館。
館の主たる老婆にやとわれた博物館技師が、老婆のコレクションである村の人々の「形見」を分類してゆく。

その過程で、村が現実から隔離されていることが、淡々と、じわじわと、わかる。
老婆は、形見のコレクションを技師に託して死ぬ。
最後に技師は、母の形見の「アンネの日記」、兄の形見の「顕微鏡」を展示し、
出て行こうとした村にとどまることを決意する。
老婆のあとを継いで、死者の形見の物語を語ってゆくことを決意する。

そもそもこの物話には「名前」が一切出てこない。
言葉を一切話さない修行を積む「沈黙の伝道師」が登場する。
老婆は言う。
「不変でいられるものなんてこの世にはないんだ」

何と言う名前であろうが、何を言おうが言うまいが、すべては変わりゆく。
僕らに出来るのはそれを記憶し、語り継ぐことだけだ。
そうやって、人々は生きて来たし、死んでゆくのだ。
変更することは誰にも出来ない。
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