ある地方都市の住宅地を歩いていると、「私設図書館。ご自由にお入り下さい」という小さな貼紙が見えた。しかし、どう見ても普通の住宅である。おそるおそる中に入ってみると、結構広いお屋敷ではあるが、たしかに個人の住宅であった。
実は、亡くなった当家のご主人の蔵書を、そのまま開放しているのだった。特に図書館らしい設えがある訳ではなく、家の中の本を自由に手に取って読んで下さいということらしい。その本の数や半端ではない。しかも、生前何をなさっていた方か分からないほど、本の種類も多種多様である。
ふと目に止まった本は、以前読んでさっぱり分からなかった理論物理学の本。これを手に取ってパラパラと読んでみると、不思議や不思議、まるで手に取るようにスラスラ読める。そういえば、あの本はどうだったかなと思うと、目の前の棚にあった。思い浮かぶ本が、まるで最初から予想されていたかのように目の前の棚に現れる。なんとも不思議な「図書館」だ。
古本屋で高価で取引される貴重な本まで無造作に置かれている。ふるえる手で取りだしてみると、いつの間にか横に老婦人が立っていた。亡くなったご主人の奥様だという。「本は大勢の人に読まれてこそ価値があるものよ。金庫に閉まっておくようなものではないのよ」と笑っておられる。
住宅地の中にある不思議な空間。目立たないし、もちろん宣伝もしていないので、たまたま近くを通りかかって中に入らない限り、その存在を知ることはないだろう。お知合いの方か、奥様と談笑している人が何人かいるだけであったが、「大勢押しかけられても困る。本当に本が好きな人だけが、くつろげる場所であればいい」という。
畳に寝転んで読むもよし、庭のベンチでくつろぎながら読むもよし、堅苦しい図書館では全くない。ただし、本を持ち出すのはだめで、この中で読んで帰って下さいとのことである。
すっかり時間が経つのを忘れ、気が付いたらあたりは暗くなっていた。何か素敵な宝物を見つけたような、晴れやかな気分で帰路についた。
という夢を昨夜見た。なんだろう。なんかいい心持ちの夢だった。実際にあれば行ってみたい。
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