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2017年08月19日15:48

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遠藤徹『スーパーマンの誕生』

 遠藤徹『スーパーマンの誕生 KKK・自警主義・優生学』(新評論、2017年)を読了。スーパーヒーローたちにはその活躍に胸躍らせられるが、彼らが掲げる「正義」とその実現は何とも言えない胡散臭さを感じさせられる。最初のスーパーヒーローであるスーパーマンからして自警主義的でしかない行動を笑顔と正義で誤魔化している。
 スーパーマンはアメリカの根幹にある自警的な暴力性の最悪な形であるKKKから意匠を借りている。そして、彼は歪んだ人間観の最もたるものである優生学を体現している。しかし、優生学的な超越者からニーチェ的な支配者の要素を取り除き、逆に民衆へ奉仕する善意の奉仕者と定義し直すことでスーパーマンの暗い出自は隠蔽された。
 更に天使やキリスト教的な救世主、究極の移民、仕上げに冴えない凡人のイメージで幾重にも包装し直されて決して外からはスーパーマンの内実が窺い知れないようにされている。そうしてスーパーマンは自警主義の悪漢と戦い、優生学の極端な推進者であったナチスと戦うヒーローとなった。余りに暗い要素を体現する彼は、それを全てひねり返し、無理矢理「正義」のコスチュームで一つにまとめ、これ以上は変わりようがない。
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