タンゴとラテンアメリカの内戦と弾圧を背景に、復讐に生きる人々の物語。
この人の小説でつまらないものはない。面白い。
読みごたえのある物語だが、こういう復讐劇でいつも解せないことは、「復讐された相手の復讐がまた起きるだだろう、正義は主体を変えれば、簡単に変わるだろう」ということ、「巻き添えになる人々」のことを一顧だにしない」ことだ。むろん、それを言っちゃおしまいなのだが。
死体が転がる物語に、ヒューマニティや「やむにやまれぬ」気持ちを持ち込むことに、リアリティを感じない。主人公に100%共感出来ないと、いちいち「おいおい」と言いたくなる(笑)。
こういう「エンタテイメント」作品は、佐藤正午流に言えば、「あらすじ」だけがあり、「小説」ではないのかもしれない。
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