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2017年04月04日19:32

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神田千里『戦国と宗教』

 神田千里『戦国と宗教』(岩波新書、2016年)を読了。戦国時代の日本人は神祇信仰と仏教を融合させ、同じ仏教の間でも例えば比叡山延暦寺と真宗本願寺とが共存しており、キリスト教も仏教に類するものとして受容された。こうした信仰を日本人に特有の曖昧な多神教と見たところで彼らにとっての信仰の重さは説明できない。
 当時の日本人は天道の観念でキリスト教の神をも理解して共感した。天道とは人間の運命を決定する摂理で、神仏同然に見なされており、世俗道徳の実践を促しつつも外面の行為より内面の倫理を重視した。日本人は天道の存在を太陽や月を初めとする天体の運行に実感していた。
 天道の観念は全ての神仏を包括し、諸宗派・諸信仰を共存させたが、自らの信仰を他者に強要すべきではないとし、他の宗旨を否定・断罪する宗派は非とされた。他者の信仰を批判するのは禁止されたので、イエズス会による神仏への攻撃は拒絶され、キリスト教には組織的な禁圧が行われた。このような方針は如何にも日本的であると見る向きがあるかも知れないが、一七世紀の世界を見渡せば、宗教改革末期のヨーロッパにおいてさえ対立よりも共存を是とする動向が存在した。
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