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2017年02月20日08:21

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食品廃棄・コンビニ会計 Food104メルマガ転載

長文ですがご興味ある方はご覧下さい。次回は何を書くか週末は常にネタ切れの恐怖が頭をかすめます。

『vol.23 核心に迫る・その4 廃棄・見切り抑制・コンビニ会計』

 前回は時節柄ふれずにはいられなかった、恵方巻問題について取
り上げました。みなさまも様々な恵方巻関連商品がありますが、召
し上がりましたでしょうか。昨年あたりから販売期限切れの恵方巻
の大量廃棄画像がSNSで拡散して話題になりました。恵方が終わ
ってもコンビニ関係者は安穏としていられません。すぐにバレンタ
イン商戦のノルマや自腹買取りが矢継ぎ早にやってきます。

 さて今回のテーマ、

・コンビニでの食品廃棄問題
・何故スーパーのように見切り販売が広まらないのか?
・上記2点はコンビニ問題の本質といわれるコンビニ会計の仕組み
 に起因

について解説したいと思います。

 まず、前々回にセブンイレブンの1店舗当たり商品廃棄額が、年
間530万円分にものぼるというデータから、日本のコンビニ全体
での食品廃棄を、年間30万トン超と試算しましたが、環境省によ
る下記のような調査結果を見つけました。

環境省 スーパー及びコンビニエンスストアにおける食品廃棄物の
発生量、発生抑制等に関する公表情報の概要
http://www.env.go.jp/council/former2013/03haiki/y0314-03/ref02.pdf

 まだ全国店舗数が4万店弱だった2005年のデータと少し古い
ですが、これによると、大手7チェーンの合計は約21万トンとあ
ります。近年コンビニ各社の廃棄量は減少しているといわれていま
す。3分の1ルールの緩和や消費期限の長いチルド弁当の開発など
が貢献しているそうですが、3分の1ルールはコンビニでは売上構
成比の少ないドライ商品が対象ですし、チルド弁当も広がったとは
いえ、消費期限が1〜2日の常温弁当やおにぎり、サンドイッチ、
カウンターFFに比べたら、まだまだ構成比は低いです。2016
年末の全国コンビニ店舗数は54501店で、上記調査時より4割
近く増えています。筆者試算の約30万トンもさほど違ってはいな
いと思われます。また上記調査ではスーパーの廃棄量も多いです。
しかし野菜くずや魚の骨なども含まれるスーパーの廃棄物と違い、
コンビニの食品廃棄物のほとんどが、まだ食べられる消費期限前商
品なのが特徴です。ちなみにコンビニのPOSシステムは大変優秀
で、消費期限が近い商品が店員の撤去忘れで棚に残っていても、レ
ジでバーコードスキャン時にはじき販売できない仕組みになってい
ます。例えば同じ鮭おにぎりでも1日3便(ローソンは2便)ある
納品ごとに異なるバーコードが付与されている為、廃棄対象商品の
アラートをレジでスキャン時に出す事ができるのです。

 ほとんどのスーパーが閉店時間が近づくにつれて、消費期限の短
い商品を10%、30%、50%と値引率を上げ、ロスを最小にす
るのが当たり前です。一方、原則24時間営業のコンビニでは、仮
に見切ったとしても常に見切り品から売れるようになり売場の鮮度
感が失われる、というのがコンビニ本社の見切り販売が広まらない
理由にたいする常套句です。しかし裁判でも見切り販売の抑制は違
法との判例もあるように、各加盟店の判断で見切り販売は自由で、
まだごく一部ですが岡山県(コンビニオーナー加盟のユニオン本拠
地。前述の裁判の勝訴を勝ち取ったのも岡山県にて)を中心に見切
り販売で廃棄を大幅に減らしている店舗も存在します。

 では何故多くの店舗が見切り販売をしていないのでしょうか?

・見切らなくても一定の利益が出ている
・店舗指導員の棚を埋めて誘客、廃棄は投資という言葉を忠実に信
 じる(マンセー)
・低収益だが次回契約更新を希望するので仕方なく見切りしない

などの理由があると思います。

 また、粗利が5割超の商品も多い店内調理のカウンターFFと違
い、弁当、サンドイッチなどの中食は、外部のベンダーで24時間
体制で製造し、365日毎日3便(ローソンは2便)の配送トラッ
クにて店舗納品されます。ベンダー経費、物流費がかかる中食は当
然粗利もFFよりは低く3割程度です。これらは半額まで見切ると
原価割れになってしまうのも課題です。

 さて、コンビニ本部が加盟店に廃棄を恐れない積極的な発注を指
導するのには、いつ行っても商品が充分にあるのを消費者にアピー
ルして誘客する目的に他に、「見切り販売されるより廃棄してもら
った方が本部は儲かる」という、これこそコンビニ会計の矛盾点と
呼ばれるカラクリがあります。ネットで検索すればいくらでも出て
くる試算ですが、簡単な掛け算と引き算であらためてコンビニ会計
を分かりやすく解説します。

 販売価格1個100円のおにぎりを例にとります。店着原価は、
70円で荒利は1個当たり30円です。これをある加盟店が10個
発注したケースを見てみましょう。本部へのロイヤリティーは荒利
の60%とします。これはセブンイレブンならCタイプ。俗に脱サ
ラタイプと呼ばれる、本部が土地建物を用意する場合の平均的なチ
ャージ料率です。また商品が販売期限切れで廃棄になった場合の商
品原価の本部負担率は、一番手厚いセブンイレブンの15%としま
す(2009年にセブンイレブンが裁判で敗訴するまでは本部負担
は各社ゼロでした)。

 まずロス無く10個売り切った場合ですが、売上1000円、荒
利300円で、本部180円、加盟店120円です。これが理想で
すが、それでも本部がそんなに持って行くのかという感想を持たれ
る方も多いと思いますが、それがコンビニビジネスです。

 次に悪天候など何らかの要因で需要予測が外れ10個中3個廃棄
になってしまった場合を見てみましょう。売上700円、荒利21
0円ですが、3個廃棄の原価が▲210円でトータルの商売は利益
ゼロのはずですが、本部負担▲32円、加盟店負担▲178円で、
最終荒利は、本部210円×60%−32円=94円。一方の加盟
店は210円×40%−178円=▲94円と赤字で明暗が別れま
す。

 では本部を恐れずに勇気を持って販売期限の近づいたおにぎり3
個を半額の50円に値下げして見切り販売して見事完売したら収支
はどうなるでしょう。売上は850円。原価700円ですので荒利
は150円で、6割のチャージを払っても加盟店の荒利は60円と
劇的に改善する一方、本部の荒利は90円と廃棄ケースより減少し
ます。これが見切りより廃棄の方が、本部が儲かるコンビニ会計の
カラクリです。

 3割もロスするのは少し極端な例かもしれません。ただこの計算
は2個廃棄のケースで同様の計算をしても、荒利は本部123円、
加盟店▲23円でまだ赤字。2個見切りだと本部120円、加盟店
80円でこちらも劇的改善。1個廃棄荒利は本部151円、加盟店
49円でようやく黒字。ただし1個見切り荒利は本部150円、加
盟店100円。本部にとってはほとんど差は無くなりますが、加盟
店にとっては倍儲かります。

 実際はさらに複雑なのですが、端的に言うと上記のような仕組み
です。みなさまコンビニ会計の矛盾点をご理解いただけましたでし
ょうか。店舗数飽和を迎え、各加盟店の収入が伸び悩む中、この本
部絶対有利の会計ルールを見直さない限り、現状は一見好調と世間
に思われているコンビニビジネスも、近い将来破綻するでしょう。
 どことは言いませんがその兆候が既に出始めているチェーンもあ
ります。コンビニ会計問題は、過去にも国会質問にも登場した事が
ありますが、重要課題目白押しの国政にコンビニ問題の解決はあま
り期待できないかもしれません。筆者も微力ながら問題解決に貢献
できないか日々知恵を働かせていますが、まだ道半ばといった感じ
です。

http://yahoo.jp/box/yQI7F2
  ↑
 最近食べた新商品「のどぐろおにぎり」。新幹線開通による北陸
ブームで、すっかり知名度のあがった高級魚。昨年のローソンに続
きファミマも展開。ただ売価248円の高設定も、具の量はこの程
度。これも今回ふれた中食製造の仕組みと、荒利30%の枠内から
の逆算での商品開発になるので、具がふんだんに入れられなかった
事情が、コンビニ商品開発経験者の筆者なら容易に想像できます。

2月13日時点筆者体重 68.0kg、前回比-0.2kg
足の肉離れ完治でバドミントンは再開もジョギングはまだで微減。

【筆者プロフィール】

矢部 忠継

 昭和47年(1972年)横浜生まれ。京都大学文学部卒業後、リゾー
トホテルチェーン、ファミリーレストランチェーン、外資系会員制
食品卸、コンビニチェーン本部を渡り歩く。原料調達、商品開発、
マーケティング、市場分析等を担当。
 現職はマーケティングリサーチカンパニーにおいて小売・卸・
外食のデータ分析、セミナー講師、レポート執筆を行う。
 趣味は43歳にして免許を取ったバイク、バドミントン、ゴルフと
料理。東京都江東区在住。愛車はボルボV70、ホンダホーネット、
ヤマハシグナスX SR。

※当コンビニレポートコーナー内で述べられているコメントについ
ては、各種データ、筆者の知見に基づき作成されていますが、その
全てが正確性、確実性を保証するものではありませんのでご了承
下さい。

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