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2017年01月31日23:54

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エコープラクシア 反響動作/ピーター・ワッツ

 二部作なのに前作「ブラインドサイト」と照応しない邦題は如何なのものか。「反響動作」って言われても内容の理解に資する訳でなし・・・というのが唯一の不満で、前作の衝撃を軽々上回る傑作SFである。これほどまでに難解で(正直、作者と訳者の解説なしでは本筋さえ追い切れなかったことは白状しておく。そしてこれほど早く再読を迫られた小説も絶無である)、それでもなおかつ、もっともSF的な意味で面白い…読後に世界観が変貌してしまうような、それこそ作中の出来事めいて脳髄をハックされるような酩酊感さえある。最先端の科学的・哲学的知見の惜しみない導入、「神はプロセスかウィルスか」なんて空恐ろしい問い、超越者たちの操るゲーム盤の上で足を引きずりながら右往左往するベースライン(=原生人類)たる主人公の寄る辺なさは、生半な「理解」より強烈に、読むものの意識に突き刺さってくる。また、ある意味本編のヒロインともいえる吸血鬼ヴァレリーの存在は、そこらの伝奇、ホラーの吸血鬼ものでも見たことのないレベルで絶対的捕食者としての異質さ、恐ろしさを描き切っていて、SF的に異物であるだけにゴリゴリのハードSFにはない色合いをこの作品に与えている。
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