mixiユーザー(id:4550802)

2016年09月01日23:55

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ビビビ・ビ・バップ/奥泉光

 「群像」にこんなニール・スティーヴンスンばりの大作SFが平気な顔で連載されてたなんで、良い時代になったもの。およそ100年後の未来世界は現在の管理・格差社会がそのままに拡大進行した感じで、結構なディストピアなのだが、そこを渡り歩く34歳独身ジャズピアニスト兼音響技師の主人公は終始オバサンの図々しさと呑気さに揺るぎなく、(たとえ年甲斐もなく全人類絶滅のトリガー的立場に立たされたとしても!)なんとも力が抜ける。いろいろだらしなく寄り道しつつも、最終的には人類と機械生命体との全面対決だの、異星生命体のコズミック・オルガンだのにエスカレートして、一応600頁の大作に相応しいスケールに至るのだけれど・・・それは結局ガジェットでしかなくて、このなんともオフビートな、軽妙さと古めかしさの錯綜する語り口こそが本書の骨子なんだろうなぁ。60年代新宿サブカルチャーとかジャズの歴史に興味がある読者なら、おのずともっと高い点もつけることだろう。門外漢にも終始楽しい思いをさせてくれる一冊ではあった。猫SFでもあるし。
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