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2016年08月17日15:38

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フリードリヒ二世『反マキアヴェッリ論』

 フリードリヒ二世『反マキアヴェッリ論』(大津真作監訳、京都大学学術出版会、2016年)を読了。プロイセン王国のフリードリヒ二世は王太子時代に『反マキアヴェッリ論』を執筆した。それはマキアヴェッリへの反駁だったが、彼なりの近代的な『君主論』でもあった。
 そこには国家のために奉仕する国家理性の体現者という新しい君主の概念が見出される。フリードリヒは最早キリスト教倫理が近代的な世俗人の情念と欲望を規制できないことを無神論などから学び取っていた。彼は無力な宗教倫理に代わり、国家主導の倫理を社会的な規範に据えてプロイセン臣民に自らの義務を果たさせ、啓蒙的な理性を働かせて君主と臣民がお互いの欠点を許し合って暮らす寛容な和合状態にまで高めようとした。
 そうして国内に一元的な専制支配を実現していた小国プロイセンにとって外敵こそ最大の危険要素だった。フリードリヒは小国が大国に対して先制的に行う予防戦を正当化し、プロイセンの領土拡張政策を根拠付け、第一次世界大戦と第二次世界大戦でも大いに利用された。文字通り完璧な啓蒙専制君主の擁護論として仕上げられた『反マキアヴェッリ論』は、その完璧性ゆえにドイツ史を一貫して拘束する呪縛となった。
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