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2016年04月29日11:35

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江國香織「はだかんぼうたち」

はだかんぼう、つまり自分を偽れない者たち。
自分に忠実。わがまま。
それだけのことだが、そう生きることがいかに困難か、いかに周囲に波風を立てるか、だれでも知っている。
それでもそうしか出来ない。
江國の物語はいつも、そんな連中で満ちている。

自己犠牲とか寛容とか、優柔不断とかいう言葉は江國作品の辞書にない。
むろん、それは「そう生きたい」ということで、実際にそうしているわけじゃない。

「ありのままでいい」という脳天気さとは対極だ。
彼らは、傷つき倒れ、よろめきながら生きる。
これが私だ何か?などとは絶対に思わない、言わない。喧伝することじゃあないからだ。

江國が甲斐よしひろを称して「身ひとつ」であることが何よりかっこいい、と書いていた。
一言だが、「身ひとつ」であることの不安や恐怖に打ちのめされ、どこかに拠っていきたいと思うこともまた含まれるだろう。
そして、それでも身ひとつでやっていくんだ、ではない。
「そうしか出来ない」のだ。

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