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2016年03月04日21:18

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リン・リード・バンクス『王宮のトラと闘技場のトラ』

 リン・リード・バンクス『王宮のトラと闘技場のトラ』(杉田七重訳、さ・え・ら書房、2016年)を読了。人間に捕らえられてローマ帝国へ連れていかれた虎の兄弟にまつわる児童文学。兄は闘技場で戦わされ、弟は宮廷で皇女のペットになる。
 虎の兄弟に感情移入できるよう書かれているが、それゆえ、弟が皇女に危害を加えぬよう牙を抜かれたり去勢されたりするところなどが重く感じられる。人間関係においても身分の壁などが立ちはだかり、決してハッピーエンドではない。子供が成長する心理の綾も割りと丁寧に描かれてある。
 しかし、そのせいで却って作品の不備が目立つ。皇女は現代人でないにもかかわらず、何故か一人だけ現代的な価値観を持っており、奴隷制や闘技場に異を唱える。また、キリスト教もやたらと持ち上げられており、悪い意味で子供向けに道徳家ぶったところは鼻につく。
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