オウィディウス『転身譜』の現代的再話とでもいおうか。エウロパの劫略から始まり、アリアドネの死、ヘレネの虚像、スパルタの剛健、ディオニソスの秘儀、そしてカドモスとハルモニアの結婚・・・汲めど尽きせぬギリシア神話の挿話を、その異説もまたをコーダ風に巧みに配置して、絢爛豪華なタペストリに仕上げてみせる。一つ一つのエピソードや神名、人名は慣れ親しんだものだというのに、それらにまったく新しい(あるいは真実旧い？)輝きを帯びさせている。おそらく、今後一生の間、何度も何度もくりかえし立ち返り読むことになるだろう、そういう本に巡り会えた幸福感がある。それにしても巻末で紹介されているこの著者の他の著作もまた凄まじく面白そう、というより必読感に迫られる。タレーラン、カフカ、ボードレール、ヴェーダ！全集として訳してもらえないものか・・・。
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